オープンシステム関連情報
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中日新聞 2001年9月27日
  中日新聞社

写真オープンシステムで建築中の住宅=岐阜県垂井町で
 岐阜県垂井町。今年5月に着工した木造3階建て住宅は外壁工事にさしかかっていた。建築主は、学習塾を経営する井上正貴さん(36)。
「住宅メーカ」の展示場も回ったが、なぜこんなに高いのか、コストの内訳が分からなかった」。納得できなかった井上さんが、家造りのパートナーに選んだのが、オープンシステムを進めている同県大垣市の設計事務所。昨年12月から打ち合わせを重ね、半年がかりで設計を完成させた。延べ約165平方bで、税金などを含む総費用は、3200万円。
 住宅の価格が決定する全過程を公開し、消費者全体の納得できる家造りをしてもらおうという「オープンシステム」が実績を伸ばしている。工費の無駄を徹底して省くことで「ほとんどの場合、住宅メーカーや工務店に一括発注するより1,2割は安くなる」という。システムを担うのは、伝統的な住宅産業の仕組みに「理不尽なことがまかり通っている」と反旗を翻した建築家たちのネットワーク。何が違うのか、現場を訪ねた。
「最新の耐震技術や多くの希望を盛り込んだ高グレードの家が、実現できることになった」と井上さん。
 井上さんと設計事務所が結んだ契約は「業務委託契約」。事務所は設計と施工監理をはじめ、井上さんの代理人として家造り全体を統括する。木工や電気、給排水、建具など工事そのものの請負契約は、井上さんが各専門工事業者らと個々に結び、支払いも直接行う。「分離発注」といわれる手法。工事項目ごとに複数の業者の見積額が建築主に公開され「なぜこの業者を選んだのか」が数字で明快に示される。
 分離発注の対極にあるのが、伝統的な一括発注。住宅メーカーや工務店が元請けとなって建築主と契約する形だ。多くの場合、元請けは下請けの専門工事業者に仕事を発注。場合によっては孫請け、ひ孫請けへと仕事が流れ、各段階で利益が差し引かれる。これが多重下請け構造。元請けが完成に責任を持つ安心感はあるが、住宅資金が中抜き″される仕組みは、建築主が「理不尽」と受け止めても仕方ない。
 「建築費を透明化したい」 「下請けに工事を丸投げしてしまうような元請けに、入念な設計を期待できるのか」 「施工を請け負った業者が、施工の出来をチェックする監理者でもあることがほとんど。矛盾していないか」−。オープンシステムは、そんな思いを持った鳥取県の建築士が1992年に提唱し、その後、賛同する全国の設計事務所によって「オープンネット株式会社」が設立された。会社といっても、主な目的は工事業者や資材調達など、個々の事務所では把握しきれな
い情報の共有にある。
 現在の会員数は約200事務所。建築実績は約300棟で、年内着工予定が約50棟。このうち約200棟は最近2年間に集中している。東海地方での実績はまだ40棟ほどと少なく、千葉県など首都圏のベッドタウンが大部分を占めている。「設計に半年。着工後は現場監督役も務めるため、建築士1人あたり年間3棟が限界」といい、地域によっては注文に応じきれない状況という。
 合理的な分離発注と入念な設計・監理自体は、新しい手法ではない。消費者主体の家造りを目指す設計事務所には「従来の手法」にほかならない。だが、個々の事務所の取り組みを消費者が知る機会は少なく「分離発注はややこしい」とのイメージが先行していた。
 オープンシステムの新しさは、「分離発注の合理性」を本やインターネットを通じて消費者に分かりやすく示し、多くの事務所が結束することにより、実現できる体制を全国規模で整えたことにある。「素人に分かるまい」と消費者への情報公開を控えがちで「ブラックボックス」といわれることすらある建築業界。変革を目指す動きが広がりつつある。
 
オープンシステムには、不安材料もある。施工ミスや業者が途中倒産したら、責任の所在はどうなるのか。また、設計事務所や工事業者の多くは経営規模が小さく、将来にわたって安定しているとは言い切れない。完成後の保証は大丈夫だろうか。事実、「システムには納得できるが、住宅メーカーなどに依頼する方が無難では」との指摘は根強かったという。
 こうした中、1999年に損害保険会社による「オープンシステム補償共済」がスタートした。工事費に設計事務所への業務報酬を加えた金額の1000分の7を支払うことで、工事中と完成引き渡し後10年間の補償を受けられる。建築中に工事業者が倒産したり、引き渡し後に構造部分の欠陥や雨漏りなどがあったりした場合、建築主は別な業者との再契約や補修での追加費用を負担しなくて済む。
 また、設計上の過失で建物に問題があれば、建築士の責任を認めた上で、賠償の対象となる。こうした専用の保険商品が生まれること自体、多くの事務所が結束した成果といえる。
 建築業界からは「消費者意誠が高まる中、伝統的な一括発注方式が制度疲労″を起こしているのは確かで、価格をガラス張りにしようという取り組みは業界に風穴をあけた。だが、現状ではあくまでベターな選択肢にすぎず、オープンシステムだから大丈夫とはいえない」との声もある。
 会員事務所は地域ごとにリスト化されているが、個々の能力についての客観的な評価は示されていない。消費者が依頼先を選ぶ決め手は乏しく、そこには依然としてリスクがある。「能力の劣る会員より、優れた非会員の方がいいのは明らか」との指摘もあり、今後は数字以外の情報の明示も求められそうだ。
 オープンネットのホームページアドレスは=http://www.open-net.co.jp 問い合わせは、中部地区幹事の「現代設計」=電0584(89)6663=へ。東海地方で近く開かれる説明会は次の通り。▽10月6日後6・30 愛知県女性総合センター「ウィルあいち」 (名古屋市東区)。問い合わせは「ハウ・ハウ」=電052(842)0894▽同月14日後3 ソフトピアジャパン(岐阜県大垣市)。問い合わせは「現代設計」。
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