オープンシステム関連情報
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新建ハウジング 2003年4月20日
  新現場動向〜顧客主導で納得感ある家づくり〜

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ユーザーの代弁者・設計士の試み

〜一括請負からの脱皮〜




【山中省吾代表】

よく設計料が高いといわれるが、そのためには「当然だ」という仕事をしないと次はない。施工に弱い点は、ネットや塾で会員どうしが教えあう関係が仲間を結ぶ。専門工事業者のネット会員(業者バンク)は、会費(2万4000円/年)の半分を地域での行事・フェアに使え、ユーザーに直接仕事や技術を発信でき、やりがいや信頼を回復できる。

「本当の価格はどこにあるのか?」。建築主や設計士のそんな疑問に、「オープンシステム」という方法で家づくりをする設計士集団が、各地で健闘している。建築資材の原価、設計料や現場監理料を明確にした、その動きを取材した。

【設計監理と施工の分離発注】

 「オープンシステム」の家づくりは、建築主が主体である。住宅メーカーや工務店にお任せの一括請負型ではなく、建築主が直接、専門業者や建築士と契約し、工事を発注するという分離発注型の発想だ。工務店やハウ
スメーカーとは、いっさい工事請負契約をしない。

 設計士は、家づくりにうとい建築主の側に立つち、「業務委託契約」を結び、図面を描いたり、専門工事業者に意向を伝えたり、役所への書類申請、工事監理などを取り仕切る。

 海外では、コンストラクションマネージメント(CM)として定着しているもの。完成まで、建築主の代理人としてサポートするのが役割である。

 設計監理業務だけでなく、施工に関しても「分離発注」を適用するのが同システムの特徴だ。

 設計士は建築主の代理人として、複数の専門工事会社から見積もりを出させ、施工会社との相性・工程の調整などを考慮して、建築主のもっとも希望する業者を選び、請負契約を図る。

 これを分かりやすくイメージ化すると、「建築主が臨時の工務店となって元請けになったかたち」(同代表)といえる。「専門能力の足りない建築主は、専門技術者の建築士を臨時に雇った」ともみなせる。

 代理人としての建築士は、中立な立場で建築主のかわりに専門業者(契20業種)の施工業務を統括・推進する。
 この運営方法には専門業者にこそ、建築現場のノウハウ、技術がある」という山由代表のこだわりがある。「建築主、建築士、専門業者は顔の見えるパートナーの関係とも。

 また、業者の見積もり参加は自由で、通常は同じ業種に複数が参加。同業者間での見積もり提出で競争原理がはたらき、「良いものをさらに安くできる」という。

 建築主は、その工事それぞれに連動させた工程表をもとに、各工事の出来高払いを専門業者に直接振り込む。

 建築主にとっては、「面倒な分だけ、重要な意思決定の参加・無駄な費用の削減・質の向上・透明性の確保が得られ、納得できる家づくりが可能」(山中代表)と話す。

 建築主は臨時の社長ながら、建築士を介してすべての情報を掌握し、筒抜けにできる。それが「価格の見える家づくり」といわれる同システムのゆえんである。
【業務委託料】

一方、建築主にとって気になる業務委託料の算定は、「それぞれの事務所の裁量で決める」(同代表)。平均的な事例としては、人・日数に1日当たりの単価を掛けたものが直接人件費とされる。

 そのほかに、事務所維持経費として家賃・保険料・税金・光熱費・電話代・事務機器などの諸経費、技術料などを合計したもの(「建築士業務報酬料の算定例」参照)。

【「こだわりの設計」重視】

 同システムがもっとも重視するのは設計コンセプトで、「建築主と設計士との密度の濃い話し合いを抜きに、進まない」(同代表)。

 設計士は、工事で利益を上げないので、「施工会社から制約を受けずに設計仕事ができる」。ここが「建築主の意向を100%反映できる、委託と請負の大きな違い」(山中代表)だ。

 理解と意見を引き出す目的で模型を作成し、途中変更も未然に防ぐ。模型作成費用は業務報酬料にも明記され、その効果を明確にさせている。一般的住宅で実施設計図面は40〜50枚にもなる。

【会員ネットワークで情報共有】

 同システムは、インターネットで全国各地の会員施工例の情報交換、見積価格の分析や検討、会員同士の交流や勉強会などをネットワーク化。契約書などの実務書類も簡単に引き出せる仕組みだ。

 そのほか、弁護士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士など、専門家のバックアップ体制を組織化。

 全員はこうした専門家と自由にメールで質問でき、必然的に会員に公開される。そのことで、会員は「毎日が勉強で、スキルアップにつながる」(同代表)という。

 入会条件はエリア制や制限もない。会費は年間12万円。同ネット会員の役員が面接し、理念や価値観を共有できることが求められる。

 オープンネットの営業支援は、ホームページ。ユニークな企画の「お見合いコーナー」だ。「どこに頼めば良いのか?」という建築主に、お見合い参加希望に募集した設計士を紹介報告。

 建築主は、同システムの解説、設計事務所紹介、事例紹介、説明会の案内などで連絡し、「接点」や「出会い」を実行する。

 アクセス数は、150〜200件/日で「増加傾向という。会員事務所は、業務受託をしても、ロイヤリティは一切払わない。

 建材はOEM(相手先供給ブランド)を活用。最近では、海外メーカーとの提携も進んで、直接仕入れの中抜き形態をつくっている。1999年には工事保険、完成補償、10年瑕疵補償、建築士第3者賠償などの、同システム専用の補償制度も立ち上げ、パソコンを通しての多様な利用システムにも整備を広げている。



【概要】

 「オープンシステム」(鳥取県米子市)は、約10年前、代表・山中省吾一級建築士が、工務店で「できない」といわれた店舗の改装工事を、直接、工事業者や技能者と契約し、元請け、下請け、孫請け構造を排除。工務店抜きで工事を成功させた経験に始まる。

 その後も、年々その実績は右肩上がりに増え、2003年4月現在では、北海道から沖縄まで、合計約250社の設計事務所がこのシステムで家づくりに取り組んでいる。

 2002年に入って1月からの9ヵ月ですでに前年を上回り、257棟の着工で、これは「1日1棟の着工ペース」(山中代表)という。

【コメント】

◆千葉県の工務店T社長:
原価が明確になることは良いこと。これからはコンピュータの浸透で、ますます原価公開が進む。工務店も建材や工事費の透明性を進めるのは避けられない。

◆埼玉県の工務店F専務:
サッシや木部の納まりなど、専門工事の段取りと設計士の見極めが悪いと、大幅な工事遅れになる可能性もある。一括請負の工務店なら簡単に解決できる業者の手配が、個別の業者契約だと、現場の工程調整に時間がかかる。

◆設計士の立場から千葉県M1級建築事務所代表:
建築士の職能を発揮する場が狭まっている。同システムの会員になることで、一般ユーザーとの接点が多く持て、活躍の場が広がると思う。

◆透明性を特徴とする建設生産・管理システムを推進する日本コンストラクション・マネージメント(=CM)協会の古阪秀三会長(京都大・大学院工学研究科助教授):
日本の建設生産システムは明示性がないまま、相互信頼によるあいまいさが続いてきた。オープンシステムの取り組みは、木造住宅生産システムの弱点を見なおし、発注者の信頼回復や、専門工事業者それぞれに公平な立場をもたらす。今後は、どこまで本気でやるかが、認知のカギ。

【施工事例】

◆葉勢森建築設計事務所/葉勢森勉 代表

限られた予算内で、建築主の明るくて暖かい家づくりの要望を高気密・高断熱住宅の提案とオープンシステムで実現できた。楽しんで設計させてもらった。お客さんは本当に喜んでいる。

◆泣Aクト建築事務所/仁下義照 代表(右)と建築主のTさん。

仁下代表は、以前から多重下請け構造に疑問を感じていたという。建築主のTさんは「無理な相談も聞いてもらえて、何もかも満足しています」と竣工を心待ちにする。オープンシステムのことは、基礎業者の紹介で知った。ホームページで確認し、迷わず決心したという
掲載者 staff@open-net.co.jp
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