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建築知識 8月号 めざせCMの達人〜第3回〜
  RC外断熱住宅を分離発注した事例

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       めざせCMの達人
住宅コスト大公開
文=青嶋正美マルミ建築設計事務所

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RC外断熱住宅を分離発注した事例

 

■一括請負業者にも見積りをとる

 今回の事例の見積りに際しては、分離発注方式と一括請負方式の両方を検討した。分離発注方式については、オープンシステム業者バングに登録している専門工事業者と、以前から付合いのある施工業者を含めて吟味した。一方、一括請負方式については、2社に見績りをとって比較検討し、A社4,500万円、B社3,800万円という額をいただいた。

 それぞれを検討するうえで、分離発注方式では、見積り段階で詳細金額が把握しにくく、実際の工事金額との幅が大きい問題がある一方、中間マージンをカッ卜してワンランク上の仕様の採用が可能となる。双方のメリット・デメリットを説明し、分離発注方式を採用した。

 施工進行中に、仕様が変わり、単純比較はできないが、実際の工事費の合計は約2,340万円で(059頁表)、分離発注方式のメリットを生かせたと思っている。

■高断熱・高気密をコンセプトに

 筆者が、外断熱を知った10数年前は、この工法に対する施主の理解度は低かったが、最近は施主が希望する時代である。この事例もその一例である。

 今回紹介するM邸は1〜2階がRC造、3階が木造の混構造で1階に施主の母、2〜3階に施主家庭が住み、半地下を収納とするプランだ(写真1・2)。

 外壁断熱には、施主の希望どおり、水蒸気による断熱材の劣化の問題が少ないグラスウール32kg50mmを外張りし、屋根断熱には遮音も兼ねてグラスウール10kg100mmを使用した。また、サッシ廻りには発泡ウレタン(エアータイト)で隙間を埋め、3階・木造部分の土台には気密パッキン(ジェイペック)を用い、気密性能を高めた。なお、グラスウール施工の際は張合せ部分に隙間がでないよう注意が必要である。サッシは断熱性能の高い複層ガラスを使用したアルプラ(新日軽)を採用した。サッシだけは気密性保持のためできるだけよいものを選択している。

 ただ、このような高断熱仕様ではコスト増を無視できない。RC造の1〜2階部分は一般的な仕様より、約100万円の増額を想定し、設備機器に機能優先のシンプルなものを採用して調整した。

 また、気密性を高めた分、換気の問題があるため、ダクトレスの利点がある、エアフロー環気システム(三菱電機)を採用し、計画換気とした。そのことで、湿気対策と冷暖房の効率面の問題も解消した。なお、オーダーキッチン(参創ハウテック)、ユニットバス(ナスステンレス)ともにオール電化仕様としている。これらのコスト増は、電気温水器、IHヒーターを分離発注して対処する。オール電化住宅では、温水器の容量と消費電力が問題となるので、施主の生活サイクルにもとづいた消費電力データを参考に適用機種を選択したい。

■分離発注物件の苦労は買って出る

 筆者は分離発注方式とする場合、ほぼ毎日現場に出向いて監理を行うが、予期せぬ問題も起こる。本物件では、隣地との境界が狭く、塀を撤去したうえに隣家の通路を借りて施工する必要が生じたり、ミキサー車の通行で敷地への道路がくぼんでしまったりした。そのため、小型ミキサー車に変更して対処した。ただ、コンクリート打設時に何度も往復する必要があったため、締固め時間も考慮し、事前に職人の迅速な作業を徹底させた。また、資材搬入時に手作業が増えたが、狭小地では、近隣対策も考え、仕方のない部分であろう。一方で、近隣の苦情が道路整備につながったという朗報もあった。

 なお、現場状況はデジカメで毎日撮影し、施主にメールで送信する。施主は日々の施工状況を気にしているので、喜ばれる。加えて、完成時にはCD-ROMに入れて工事記録として施主に渡す。

■施主も職人気分で施工に参加

 最近は施主が積極的に施工への参加を希望する傾向があり、今回は珪藻土塗り、玄関ポーチのれんが施工、ペンキ塗り、バルコニー施工、サッシの格子付けなどは施主によるものである。コスト減につながり、分離発注の利点であろう。

 特に珪藻土塗りは、施主が資材購入先(日本ケイソウド建材)に出向き、無料体験学習で習得して施工した。また、外構のれんがブロック、照明器具や洗面台の鏡はホームセンターで調達している。玄関ドアは輸入品を採用したが(サンタ通商)、調達の際には工程を考えた搬入時期に加え、船便か航空便かでコストの開きがあるので注意が必要だ。なお、無塗装品のドアのため、塗装は施主が行った。そのほか、インターネット通販も利用してコストを削減している。

 今回の物件は施主による施工分が多かったが、各専門工事業者が協力的だったため、ドアの塗装に工場を解放してもらい、施主が足を運んで作業したこともあった。温かい配慮に感謝している。

CM達人column
住宅版分離発注の現状と課題(2)
文:山中省吾
 先日、ある勉強会に参加した。JR京都駅に近い公的施設の会議室。集まってきたのは分離発注に取り組む設計者たちだ。ほとんどは関西の設計事務所であるが、小生のように鳥取県から、遠くは北海道や富山県からの参加もあった。三十数名の勉強会である。分離発注の経験は皆浅く、これから取り組むという者もいた。このメンバーでは、4〜5年の経験を積んだ者はもうベテランの部類で、所員2〜3名、4〜5棟の実績というところが平均的だった。

 まさにこの勉強会そのものが、「住宅版CM/分離発注の現状」を端的に表していた。やっと始まったばかりの建築方式で、数年前までは皆無だったものが急速に台頭し始めたのだから、テキストすらない。それでも設計者たちは、逞しく吸収しようとしていた。

 住宅の分離発注であるとはいえ、業務を受託してから建物を完成させるまでは1年近く要する。したがって、各事務所の経験の蓄積は容易には進まない。だからこそ、勉強会の意義はきわめて大きい。一事務所の経験はわずかでも、それぞれが経験を出し合い多くの経験を共有できるのだ。

 今回の勉強会は前回の復習「川上から川下への営業戦略」から始まった。技術力を売り物としてきた設計事務所にとって、苦手なテーマである。そしてこの日は「クレームを儲けに変える着眼」。対応の仕方で感謝にもトラブルにも発展することを学習する。顧客満足度に通じる重要なテーマだ。

 何人かが、珪藻土の石灰質が反応してムクの床板を変色させた経験など、赤裸々に自らの失敗体験を披露する。皆がまるで自分のことのようにうなずきながら聞いているのが印象的だった。簡単なレジュメに添って皆が体験を出し合うため、それぞれの経験が教材であり、教師でも生徒でもある。

 この勉強会を企画したのは、滋賀で設計事務所を営む鋒山己之介氏(テクノワーク)だった。氏は4年前から本格的に分離発注に取り組み始めた。8階建てのマンション物件を手がけるなどCM方式での施工管理の経験を豊富にもち、すでに独自のノウハウを蓄積していたが、未知の可能性を秘めたこの方式を発展させようと、同じように分離発注を行う設計事務所に、ともに学ぶことを呼びかけた。そして積算根拠や施工管理のポイントなど自らのノウハウを惜しげもなく公開した。

 誰が名付けるともなく「鋒山塾」。「寺子屋塾」と名を変え、関東や名古屋などでいろいろな事務所が企画する勉強会となった。成熟して、完璧に舗装された道路のように見える住宅産業。それに比べて住宅版CM/分離発注は、まだ荒地に等しい。土があれば草木は育つように、嬉々として取り組む設計事務所の挑戦に、経験不足を補うに足る可能性を感じた。やがて、それぞれの体験にもとづいた手づくりの教材が編纂される日がくるであろうと。

山中省吾プロフィール:1953年北海道生まれ、その後、鳥取県米子市に移り住む。1974年米子高専建築学科を卒業後、地元の設計事務所に勤務。1988年に独立し、山中設計を設立、代表となる。設立後まもなく、オープンシステムを開発、ハウスメーカーや工務店に頼らない家づくりを宣言する。1998年には、日本中から集まった設計者たちとオープンネットを設立、代表となる。

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