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建築知識 9月号 めざせCMの達人〜第4回〜
  集成材の金物工法を分離発注した事例

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       めざせCMの達人
住宅コスト大公開
文=佐々木 清邦南風設計室

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集成材の金物工法を分離発注した事例

 

 私の事務所がある秋田は、雪国のなかでも、特に気温が低い地域である。そのため、快適な暮らしには、高断熱・高気密化が必要である。しかし、今回の事例では施主と話し合い、密閉感が強い高気密では不快だという結論に達し、そこで、引違いのサッシを採用して、気密は緩めることにした(図)。

■断熱パネルで大工手間を削る


一方で断熱は床、壁、天井にポリスチレンフォーム50mm厚とMDFの構造用パネル60mm厚、半柱を一体化した「Zスーパーパネル」(伊藤建友※1)を採用した。このパネルは、あらかじめ通気層ができており、一工程が省略できるうえ、内部造作の際もパネルに直接石膏ボードを張れるので、大工手間が削除できる。またべ夕基礎上部土間のコンクリートレベルを±3mm以下とし、直接断熱パネルを敷き詰めた上に、間仕切を載せる工法として、床下換気の必要をなくした(写真1)。なお、居室内の計画換気は、「エアフロー環気システム」(三菱電機※2)第3種換気方式とした。給気は、外壁の通気層内の空気を自然給気方式で取り入れ、排気のみ電動フアンとして、冷気を直接取り込まずに、電気料金も節約している。

 木造の架構部は、集成材と「ハイテク接合金具」(伊藤建友)によるラーメン構造(※3)で、柱の数を少なくできる構造とした(写真2)。今回は、基礎、木造フレーミング、断熱工事を同じ工事業者に発注したため、施工精度が向上し、工程がスムーズに進み、高断熱仕様としたにもかかわらず、工事費も抑えることができた(046頁表1)。

 また、今回の敷地は、建築基準法22条地域の指定外なので、外壁にスギ板を張ることができた(写真3)。使用したのは、12mm厚、幅150mmの秋田スギを下見板として加工したもので、B品単価として1,500円/uで提供してもらい、化粧耐火ボード塗装品よりも安くあげることができた。加えて、室内の腰板には秋田スギ白太無節相決り加工品を2,000円/uで、天井用には9mm厚、幅240mm、長さ6尺の無節の赤身を2,100円/uを採用した。輸入のパイン材と同等の価格である。さらに、階段の踏板用にスギの切株900mmを1個6,500円で分けてもらった。

 施主の一番の夢だった薪ストーブ(※4)は、施主がインターネットで並行輸入による入手ルートを見つけ、本体価格は定価45万円を27万円、煙突は一式で21万5千円、運送費3万円(名古屋から秋田)計54万円(税込み)となった。
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■ローコスト建材で増額分を抑える


 この住宅の計画予算は当初3,300万円だったが、設計の段階で少しずつ面積が膨らんできた。当初は、不動産取得税控除範囲内(※5)の240uを超えるかどうかで悩んだが、結局は超えて面積が増え、少しずつ実行予算が上がってしまった。

 以前、家具をつくり過ぎて工事費が大幅にアップしてしまった経験があったので、今回はあまり箱物をつくらないようにした。また、床仕上げも床暖房用で一番安いものとし、土間コンにZスーパーパネル35mm厚を敷き(046頁写真4)、テラコッタタイル直張りとした。床暖房システムは土間コンのなかにポリプデンバイプ13mm径(JFE継手※6)を200mmピッチで埋めたものである。

 また、壁・天井仕上げについてもビニルクロスの量産タイプとしたり、車庫上を物置きとし造作しないなど、増額を抑えた。材料も建材店、製材所、展示場などへ出かけて足で探すなど、今までの設計業務では行わなかったことも続出した。

 発注先は、専門工事業者が平均2〜3社ずつに絞られてきた。地元の建材店に紹介してもらったり、直接電話したりして増やしたが、一度外れると参加しにくくなるようだ。また、職人は現在、自分の手間を自分で決めている。人工受けは、木工事の造作部分だけである。

 今回の事例は、すべての業者を一度に決定できなかった。大工工事など大きな部分をはじめに内定させて、実行予算をつくつたからだ。

 その結果、見積り後に、200万円ほどのコスト削減をする必要があった。左官工事のモルタル部分とタイル部分を減らして100万円程度、バス、トイレ付きのゲストルームの計画だった車庫上の部屋をボードまでの仕上げとして約100万円減額した。

■ローコスト建材で増額分を抑える


 分離発注と一括発注の違いは、主役と脇役の違いだと思う。一括発注では工専費のなかから一括請負業者に諸経費を差し引かれてから、下請業者に残金で発注される。そのため、一括発注では工務店担当者にある程度譲歩した監理を強いられていたが、分離発注では、支払いが完結するまで、自分にすべての責任とジャッジする権利があり、設計担当者が最後まで主役を維持できると強く感じる。ある意味、設計図面以上の作品とすることもできるのだ。

 施工中は、まめに現場に参加することが大事だ。そのことで細かなトラブルの解決が容易となる。また、施工中にコストが狂わないよう毎月末に請求書も上げてもらい、施主の支払い計画表に毎月の出来高として反映させている(表2)。なお、完成率、出来高は管理上の出来高と請求額の出来高のバランスを見るための目安である。

 また、契約を多く交わすほうが価格も安定するので、売買も契約することにじている。普通、買うものは契約しないで見績りだけですませてしまいがちだが、しっかりと売買契約を交わすのだ。そうすると、施主や納入業者も安心でき、納入日の確認もちゃんと問い合わせてくれる。後に金額が狂いにくいと考えている。この事例では、当初つくらない予定だった車庫上の部屋も室内仕上げをしたり、内装クロスのグレードも上がり、細かく合計すると300万円くらいの追加が出てしまったが、施主は「オープンシステムに払うのだから納得できる」といってくれた。

 多くの設計事務所は地元の工務店や建設会社との共存を大切にしているだろう。しかし、分離発注を厳選して行うには、その関係をまず断ち切る必要があると思う。そのような利害関係を断ち切れないと、分離発注を成功させるのは難しいだろう。私は以前経営していた設計事務所を一度解散した経験がある。営業基盤が100km程離れた街で、改めて会社登録し直した。おかげで、今では専門工事業者との関係がとてもシンプルにでき上がっている。
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※1伊藤建友問合せ先:TEL0184−24−3360
※2 三菱電機問合せ先:TEL0120−139−365
※3 高強度集成材のエンジニアードウッドと接合金物を用いた木造ラーメン構造の架橋に断熱材、間柱一体型の構造用合板を用いて箱をつくり、一空間を構成した構造
※4 薪ストーフは施主が直接購入した
※5 不動産取得税の建築部分は評価額×3%だが、一つの敷地内の床面積の合計か50u以上、240u以下の場合、(評価額−1,200万円)×3%に軽減される
※6JFE継手問合せ先:TELO3−3639−1621(配管営業部)

建築概要
 建築名称:S邸
 所在地:秋田県南秋田郡大潟村
 敷地面積:1,346.43u
 建築面積:288.37u
 延床面積:400.39u(1階床面積:195.00u、2階床面積:205.39u)
 小屋裏収納面積:28.64u

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