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建築知識 10月号 めざせCMの達人〜第5回〜
  地場の「西川材」を地域ネットワークで調達した木造住宅

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       めざせCMの達人
住宅コスト大公開
文=大沢 宏コウ設計工房

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地場の「西川材」を地域ネットワークで調達した木造住宅

 

 筆者は、顔の見える家づくりをモットーとしているので、山から現場まで、つまり産地や生産者から職人までを地域ネットワークとすることで家づくりに活用している。そのため、今回の事例(写真1・図)の施主にも、工事中現場の見学や完成見学会の参加をしていただいたうえで、当事務所を選択いただいた。

 施主は、国産材の使用、ダイナミックな吹抜け、開放的な家を希望し、特にご主人はリビングと浴室、奥さんはキッチンにこだわりをもっていた。そのため、それらを取り入れたプランとし、リビングには、抱えきれない直径600mmほどの2本のクリ丸太の大黒柱と、それをつなぐアカマツの大梁、加えてヒノキのサッシを用いた(写真2)。浴室は、床すのこ、壁、天井、エプロン部にヒノキ板を用い、キッチンも、ワークトップがヒノキ製のオーダーメイドである。そしてこれらの材料はすべて地域ネットワークのメンバーに供給してもらった。

 クリの大黒柱と大梁はそのネットワークの材木店が盛岡で入札などによって仕入れ、そのほかの構造材も同じ材木店が筆者の事務所がある埼玉県飯能市周辺地域の地場材、西川材のスギ材を主に仕入れたものだ。地域ネットワークでは毎年数回、材木店や設計者、筆者の所属する「埼玉住まいの会」や「木の家だいすきの会」の会員、施主などが参加して、西川材の伐採見学会を開催している。今回の施主にも参加してもらい、自分の家の材料の生産場所、生産者、製品となる過程を見てもらった。このような地域ネットワークのつくつた家は、お互いの顔が見えるため、不当な価格や内容を提供できないと信じている。

■木工事は自社積算でコスト減

 設計開始時には、概算予算書を作成し、工事項目ごとの金額に割り振っている。概算予算書は過去の金額データと想定される仕上げなどにより作成し、施主にはあくまで予算配分の表であることを強調する。だが、プラン作成時には、多くの希望が出て、床面績も拡がることが多い。その際は、はっきりと予算的に厳しいことを伝えたうえで、希望の優先順位を考えてもらう。見積りがまとまってからの仕様・プラン変更では工事着手が遅れ、むだな経費もかかってしまうためだ。実際、今回の事例も、最終的には予算を上回ったが、優先順位を決めたことで、追加予算と諦める部分を明確にでき、早い段階で最終予算を確定できた(表1)。

 また、工程を勘案した支払い計画書を作成し、月ごとの支払い計画を提示する。併せて自己資金と借入金、その支払い時期も検討したうえ、概算予算書をもとにした工事発注予定一覧表を修正して全体金額も再考したい。

 なお、当社では予算調整と現場での管理をスムーズに運ぶため、木工事の積算は主に自社で行っている。フレーム部分は、材木店のCADデータをもとに積算(表2・3)、羽柄材、建具材、造作材などは、当社の設計担当者が図面から拾い出している。それらは、積算用図面やCAD図に記入、加工調書まで作成し、工事に反映させ、あまり材を減らしている。特に造作材などは高価なので、実績にもとづいて注意深く算出している。
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■次の工程に余裕をもって施工する

 工程管理においてほ、関連する工事は次の工程の着手可能日確定後に進めるか、1日ほどの余裕を見て段取りする。予定した工程が未完了のまま新たな業者が入ったが、仕事にならないという問題を繰り返すと、専門工事業者は、次回の見積りにロス分を上乗せすることがあるうえ、余裕をみすぎると工期遅延経費もかかるので気をつけたい。特に雨の影響を受ける、屋根やベランダの防水工事は段取りよく行いたい。

 万一、施工中に追加や変更があった場合は、おおよその増減額を施主に提示したうえで、了解を得て進めるが、その際は増減額を書面で提示して対応したいところだ。

■よい条件下の仕事で質を高める

 すべての工事を競争入札とし、安い業者を集めれば工事費を安くすることは簡単である。だが筆者は、今回の事例でも、内装のほぼすべてをムクの木と左官で仕上げ、質感を求めた設計にしているので、安さ以前に一定レベル以上の技術をもつ職人でなければいい結果にならないと感じている。

 分離発注で安くなる部分とは、いわゆる工務店経費であり、専門工事会社にとっても元請けとなることで、工事費の回収も確実で期日も早くなる利点がある。そう考えれば、元請けと直接交渉を行うことが、よい条件下での仕事、ひいては高い質の仕事につながる。これが分離発注の第一の目的ではないだろうか。
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CM達人column
住宅版分離発注の現状と課題(3)
文:山中省吾
 分離発注「入門者」の腕を磨く場として発生したのがメーリングリストである。ここにはCM管理者として技の向上を志す設計者が集まり、初心者は疑問を、先輩は自らの経験を語る。

 たとえばこんな具合だ。「現場で発生するゴミの処分法は? またその見積り法は?」。すると回答が来る。「産廃業者に依頼し、2tのゴミコンテナを置いた。一台当たり2万8千円の処分費で、40坪の住宅で4台分だった。見積りでは30万円の予備費を計上し、ゴミ処分費、現場の電気代、水道料全など、工事が完了しなければ確定しないものを予備費で実費精算した」。というもの、「今回は違う方法を取った。各業者のゴミはすべてもち帰ってもらい、費用も各業者の見積りに含めるよう見積り要綱書で説明すると以前より現場が清潔になった」などだ。

 ただ、メーリングリストは反応の速い反面、微妙なニュアンスや掘り下げた内容は伝えにくい。そこで始まったのが8月号のこの欄で紹介した「寺子屋塾」だ。ここでは顔を合わせてそれぞれの経験を教材に学習する。そして、住宅版CM/分離発注を志す誰もが学べる研修会(*2)が始まる。経験談が教材の寺子屋塾から、共通で学べる教材を同時進行で編纂し持続可能なスキルアップのために(社)日本建築家協会のCPDと連動しようというものだ。

※2 住宅版CM/分離発注研修会 日時:10月16日(木)18:00〜20:45、場所:宮城県仙台市せんだいメディテーク7階「スタジオシアター」参加朱:2千円、問合せ先:TELO859−37−3343(オープンネット)

山中省吾プロフィール:1953年北海道生まれ、その後、鳥取県米子市に移り住む。1974年米子高専建築学科を卒業後、地元の設計事務所に勤務。1988年に独立し、山中設計を設立、代表となる。設立後まもなく、オープンシステムを開発、ハウスメーカーや工務店に頼らない家づくりを宣言する。1998年には、日本中から集まった設計者たちとオープンネットを設立、代表となる。

掲載者 koupw.oosawa@nifty.ne.jp
関連HP (有)コウ設計工房




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