オープンシステム関連情報
各種メディアへの掲載、建物の受賞等、オープンシステムに関する情報です。
 

『METI-CHUGOKU』 2003年6月号
  女性アナウンサーが経済人に問く〜オープンシステムとは

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米子市にある一設計会社が全国へ発信した「建築革命宣言」から11年。オープンシステムの信念の元に集まった設計会社のネットワークは、250社を越えるまでになりました。「誰のための建築なのか」という素朴な思いが、今日の結集力の原点です。オープンシステムの仕組みを全国展開させた生みの親ともいうべき山中社長にお話を伺いました。

オープンシステムとは、建築主が自分の家を作るための架空の工務店の社長になるということです。


■オープンシステムはパートナー選びが最重要

-----まずオープンネット鰍ノついて簡単に教えてください。

山中
 オープンネット鰍ヘオープンシステムで仕事をする会員設計業者に対するサービスを目的とする会社です。ですから目に見える商品はありません。インターネット上で、一般公開のホームページと会員専用のホームページとを使い分け、会員専用のホームページでは、参加しているメーカーさんの見積もりが直接取れて、発注もできる仕組みになっています。また、メーリングリストは二十種類くらいあって、地域別や営業関係、技術的な問題、保障に関する問題などと使い分けて利用してもらっています。

-----建築のオープンシステムとはどんなものですか。

山中
 分かりやすく言えば、建築主側が自分の家を作るための架空の工務店の社長になるということです。でも、建築のことは詳しくないから、社員の役割を果たす技術者を一人雇う必要があります。それが我々設計者で、どんな家がいいのか、社長と技術者が話をしながら決めていくというシステムです。だからオープンシステムは、建築主がパートナーである設計者に誰を選ぶかということが一番重要になるわけです。純日本風のものが得意かヨーロッパ風の建物が得意かで、どうしてもそういう色合いが出てきますから…。

-----一般公開のホームページでは、その設計会社選びを「お見合い」というふうに書いてありました。

山中
 ホームページを見た建築主さんは、基本的には自分がいいと思うところに連絡をすればいいんです。「お見合い」というシステムを使う場合は、建築主さんがフォーマットに希望事項を記入すると、名前を消した状態で、○○県○○市までの情報が書かれたフォーマットが会員設計会社に配信されます。それを見た設計会社は、自社ピーアールを書いてエントリーします。建築主さんは、会いたいと思うところがあれば会って直接話を聞いた上で、この事務所に任せようと思ったらそれで成立。会ってみたけれどやっぱり近くの工務店がいいということであれば工務店さんにお願いすればいいんです。

-----会員設計会社に依頼することが決まった後はどうなるんですか。

山中
 基本的に社長(建築主)さんはわがままなものですから(笑)、言いたいことを全部言えばいいんです。その中には矛盾したこともいっばいあって、例えば、狭い土地に広い家を作れとか…(笑)。全部の要望をよく聞いて設計者が整理をし、予算内におさまるように計画を作り、業務に入る前に業務委託契約を交わします。模型もしくはCGで立体感もつかんでいただいて検討を重ね、実質設計が済むと、基礎工事、屋根工事、サッシ工事、塗装工事などの業種ごとに見積もりを取ります。最近では、大阪や東京の都市部においては業種別のネットワークさえできつつありますから、業者登録しておくと、設計会社が見積もりを開始するという情報がインターネットなどで入ってきますから、業者さん側も希望があれば見積もりに参加できます。そして、いろいろ来た見積もりを設計会社が検討分析し、決めていきます。

-----建築主は希望を言うだけで、煩雑な仕事はすべて設計会社がするんですね。

山中
 そうです。また、完成したあとで設計会社や施工会社のミスによって大きな欠陥が生じた場合、基本的には設計会社と参加した個々の業者が連帯の責任を持って直しますが、被害が大きすぎる場合は、東京海上の補償共済の仕組みも作っています。

我々設計者は一体何のために仕事をしているのか。



■建築主本位のオープンシステム



-----オープンシステムは、1988年に興された山中設計時代にその源があるとお聞きしていますが、きっかけはどんなことだったんでしょう。

山中
 山中設計は私が35才のときに作った会社で、現在はオープンネット鰍フ会員でもあります。現在私はオープンネットに集中していて、山中設計の業務にはほとんどタッチしていませんから、山中設計の者には悪いけれど「社長は死んだと思え」って言ってます(笑)。オープンシステムは、92年に、たまたまあるレストランを改造する設計監理の仕事を依頼されたことに始まります。設計が終わって地元の工務店3社から見積もりを取るときに、工事金額は問題ないけれど、一ケ月という条件の工事期間が短すぎてできないというんです。米子ではまだ少しバブルが残っていて業界は忙しかったから、3社すべてが二ケ月は必要だと言ってきました。でも、工事期間中はレストランの売り上げが当然ゼロだけれど従業員の給料は払わなきやいけないから、多少工事費がかかっても工期を短くすることは重要なんです。そのとき、「実際に工事をする大工さんや電気配線する職人さんたちを集めてきたらできるはずだ」と思ったんです。そこで、レストランの社長に「あなたが架空の工務店の社長になりなさい」と言いました。

-----まさに今のオープンシステムですね。

山中
 そうなんですよ。ただ、「私も現場監督の経験は初めてだから、無駄が発生して工務店が出した見積もりよりオーバーするかも知れないから多少覚悟して下さい。でも工期は必ず守ります」と了解を得て、当初の予定通り一ケ月で完成しました。ところが、工事費は二割り安くなったんです。一番喜んだのは、何百万円というお金が丸々残ったレストランのオーナーです。最初は私も、こんなにうまくいっていいのかと思いましたが、理屈からいけば、職人たちは普段通りの金をもらっていて、工務店の経費分がコストダウンしただけなんです。つまり、本来工事をまとめる工務店などのプロが介入することによって合理化されて安くなるというなら分かります。しかし、介入することによって高くなるしいいものができるわけでもないなら、元請けの会社が存在する意味は一体何なのか。と同時に、我々設計者は一体何のために仕事をしているのだろうかと思いました。それが、現在のオープンシステムをやろうと思ったきっかけです。そして、たとえ小さな住宅でも、建築主さんが本当に望むものを作っていった方がはるかにやりがいがあると思うから、ゼネコンや工務店がらみ、公共工事を全部断わろうと社員みんなで決めて、関係のあったゼネコンなどに、「これからは設計のお手伝いはできなくなりました」と、仕事を全部断つて回りました。

-----オープンシステムの将来性に、経営者としての自信はありましたか。

山中
 何となく、これがやれなきやおかしいと思っていましたが、5〜6年は仕事がそんなになかったですから大変な思いもしました。スタート時に「建築革命宣言」をし、毎月一般市民向けのセミナーを米子で有料で開き、全国に同じような考えを持っている設計者はたくさんいるだろうから、そのうちに私たちの考えが伝わっていくだろうと思いました。そして、4年後の96年に「日経アーキテクチェア」創刊二十周年特別記念号の特集ページの取材を受けたんです。設計者には随分インパクトのある雑誌ですから、全国の設計者や会社から反応があり、さらに、日本建築学会の目にとまりました。実はちょうど時期を同じくして日本建築学会では、PM(プロジェクトマネージメント)やCM(コンストラクションマネージメント)という、海外では定着しっつあるけれど日本ではまるつきり行われていなかった手法を定着させなければいけないと、特別研究委員会を作って研究し、秋のシンポジウムで発表しょうというときだったんです。それで、学会のシンポジウムで講演するように依頼を受け、体験発表をさせていただきました。

-----実際にオープンネット鰍ニいう組織になるまでは。

山中
 全国各地で同じことを考えていた設計会社が雑誌やシンポジウムを通じて集まってきて、98年の年明けには5社がオープンシステムを始めていました。そして、月一回会議を開いているうちに、一事務所では乗り越えられない壁があることが明らかになりました。例えば、建材を買うルートについての圧倒的な情報不足や、いろんな業者が参加してできた建物にもし欠陥があった場合の補償問題などです。そのためにはネットワークを構築して会社を作ろうということになり、半年ほどかけて事業計画書をまとめて銀行に持っていったら、ここからがまたラッキーでした。当時は通産省がベンチャーを育成しようという時代で、銀行も投資会社を作ってベンチャーを探していました。そこで、銀行も出資することになり、次々とお金が集まって秋には株式会社として立ち上げることができました。その後、親しくなっていた日経の記者さんのお世話もあって、経団連会館で記者発表し、集まったマスコミ30社ほどの方々に全国的なニュースにしていただきました。

ネット上だけで勉強できるとは思っていませんから、各地域ごとに集まって勉強会を開いています。



■会員設計会社へのサービス内容



-----会員は現在256社だそうですが、どうすれば会員になれるんですか。

山中
 設立当初50社くらいまでは全部私が面接して審査していましたが、今は、北海道なら北海道の代表の方に面摸してもらい、その結果をさらに各地域十人で構成している審査委員会で新規会員を審査しています。

-----審査基準はどんなことですか。

山中
 一番大切なことは、「オープンシステムは儲からなくて大変で、責任も発生するのになぜやりたいか」です。それを小論文にまとめてもらうことと、設計図面で能力を見ます。ただ、コミュニケーション能力だけは分かりません。実はこれがないと、建築主の気持ちがくみ取れないし図面に反映できないし、工事現場の職人ともコミュニケーションができません。またオープンネット鰍ヘ、企業としての側面と、建築革命運動としての側面の両方があって成り立っている会社ですから、運動としての側面から参加している設計会社は、自分たちも運動していくんだという意識がすごく強いことが特徴ですね。

-----会員にはどんなメリットがあるんですか。

山中
 実際に会員専用のホームページを開いてみましょうか(と、パソコンを使って説明してくださる)。ユーザー名とパスワードを打って入ります。建材に関してはOSモールと呼んでいます。これは自社で開発したソフトで、メーカーさん側で新しい材料ができた場合など自由に編集できて、更新ボタンを押してサーバーを入れ替えることができますから、常に新しい情報が入手できます。設計会社は、お問い合わせの箇所に文章を書いて送信ボタンを押すと、その段階でどこの設計会社がサーバーにアクセスしているかを最初のパスワードで認識していますから、何々設計と書かなくても全部相手に分かっています。資料請求や見積もりも同じことで、パソコン上でやりとりして発注できます。つまり、いろんな流通を通らないメーカー直の価格ですから、建材店では30万円だけれど、このOSモールでは20万円になるといった具合です。OSモールのほかには、営業関係の資料や、説明会場でお客さまに説明するときに役立つ資料などもあります。それをダウンロードして使うことができ、さらには、全国の各会員が自由に改良編集した資料が再びここへ集まってきます。

-----会員相互の情報交換は、すごい数のやりとりでしょうね。

山中
 すごいですよ。一番威力を発揮するのは、何か問題が発生したときなどです。例えば、「工事中に屋根の下に結露が発生したけれど何が原因か分からなくて困っている」と、オープンネットメールに投稿したとすると、同じような体験をした者がいますから、数時間で何通もの答えが返ってきます。ただ、会員設計者もネット上だけで勉強できるとは思ってないですから、かなりの頻度で各地域ごとに集まって勉強会を開いています。

オープンシステムで建てて良かったと評価されることによって、オープンネットという会社も評価されます。



■お客さまに評価されるオープンシステム



-----ところで、業界では異端児だと思うんですが、風当たりは…。

山中
 これが不思議とまるっきりと言っていいほどありません。他社と競合して勝ち取った仕事ではなく、オープンシステムは直にお客さんが設計会社にいらっしやるから、目立たないし誰も気がつかないんです。これからネットワークが広がって、米子の一割か二割はオープンシステムで建つということにでもなれば違いますけれどね。

-----意外でしたか。

山中
 ええ。拍子抜けでしたね(笑)。

-----ネットワークはどこまで広がり、今後についてはどんなふうにお考えですか。

山中
 目標としては、設計会社が1,500〜2,000社くらい、参加する専門工事会社は20,000〜30,000社くらいになると思っています。ネットワークが大きくなると、社会的責任も大きくなっていきますから、オープンネット鰍ニ会員個々の関係をきちんと整理し、我が社はどこまで責任を取るのかを明確にしていかなければなりません。また、建築主さんや業者さんがいつでも相談できる仕組みなどを、早いうちにきちんと整備したいと考えています。さらに、会員設計業者がどうやってスキルアップできるか、また、会員に対する新しいサービスをたくさん強化したいと思います。例えば、あるメーカーの電化キッチンを、250社も集まっているのだから格安に調達する方法などです。会員にとってマネージメント業務は実際に効果があるし、お客さんには直接費用として表れますからね。

-----これからの課題は何でしょうか。

山中
 オープンシステム的ないわゆる分離発注は、ネットワークがなくても方式としてはできますから、私たちがやり始めたことによって分離発注でやる会社はたくさんできました。しかし、どんな効果を生むかということは個々の会社の能力にかかっているので、その能力を高めるために情報公開したり、勉強し合ったり、価格の安い資材を探すなどしてネットワークが存在しています。オープンネット鰍ゥら見る顧客は設計会社ですから、月々10,000円の会費を払っても断然得なサービスが受けられるということが広がっていくと、会社としては長続きします。もう一つ本当に定着するためには、会員設計会社がオープンシステムでやった仕事がお客さんからすごく良かったと評価されることによって、オープンネットという会社も評価されます。経営的な課題は、月10,000円の会費は実に安くてできることに限界もありますから、次の収益をどう生むかということですね。

-----お忙しいところにさらに取材をねじ込ませていただくという形になりました。本当にありがとうございました。
掲載者 staff@open-net.co.jp
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