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『三菱総合研究所』報告書
  『住宅市場ビジネスプレイヤー実態調査』報告書〜平成16年3月

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この調査は、経済産業省「平成15年度製造産業技術対策調査等(住宅実態調査)」による受託調査により、株式会社三菱総合研究所が実施したものです。


1.目的

 平成14年度「住宅市場ビジネスプレイヤー調査」に引き続き、消費者の立場に立った付加価値の高い供給・サービス事業を展開しているプレイヤーのうち、アンバンドル化された各機能を今後担うであろう企業の事業推進者(企業)を対象とした調査を行い、各企業が目指しているビジネスモデルの実態について取りまとめを行った。

 アンバンドル化とは「供給を担う機能単位ごとに供給体制を分離すること」であり、平たく言えば今ある企業の体制をバラバラにする、ということを意味している。住宅企業がもつ機能一設計機能・生産機能・流通販売機能・施工機能・サービス機能・金融機能・リサイクル機能など−を分解し、それぞれを多様化した居住者のニーズに対応できるよう高度化させるものである。機能を「アンバンドル」した中で、それらをどう組合せビジネスモデルを築き上げるか、それは本来、多様な企業に委ねられるものである。

 しかしながら、既存のプレイヤーを中心に新しい試みは見られ始めているものの、供給者の論理(従来の供給プロセス)を前提としており、多様化している消費者ニーズを十分に満足させるものとは言えない。すなわち、消費者参画を前提とした合理的な市場形成に十分に寄与できていない。

 そこで、消費者の立場に立った付加価値の高い供給・サービス事業を展開しているプレイヤーのうち、アンバンドル化された各機能を今後担うであろう企業の事業推進者(企業)を対象とした調査を行い、各企業が目指しているビジネスモデルの実態について取りまとめを行った。平成15年度新たに取り上げた企業は14社であり、平成14年度の17社とあわせて計31社のビジネスプレイヤーを紹介している。



2.調査方法

2.1 文献調査による調査対象の抽出

 調査対象の抽出は、平成14年度と同様に文献(新聞、雑誌記事など)から行った。抽出の視点は、これまで住宅産業にはなかった新規のビジネスを実施しているかというものである。平成15年度にリストしたものを含め、企業を以下の機能分類でカテゴリー分けした。ニュービジネスの機能分類については、2年間の成果をもとに、よりニュービジネスの分野が明確になるよう再整理を行った。

 昨年度の「@工務店支援ビジネス」と「A業者支援ビジネス」は「T供給者支援ビジネス」として、「C消費者エージェント」と「Dマッチングビジネス」は「V消費者エージェント」に統合した。また、「Gネット系ビジネス」については、個別企業の機能に応じてTからXあるいは「その他」こ分けた。

ヒアリング対象企業(31社)
分類(1) 分類(2) 企業名 事業概要
((3))消費者エージェント (4)不動産ネットオ (株)ネクスト ・不動産総合ポータルサイト「HOME'S」の企画・運営、コンテンツ提供サービ
ークション運営 ・Webシステム・DBの開発、サイト構築・運営代行、Webマーケテイング、プロ
モーション
(4)不動産ネットオ (株)アイディーユー ・不動産オークション事業、不動産コンサルティング事、不動産オペレーション
ークション運営 事業
(5)コンストラクションマネージメント (株)フラスPM ・建設プロジェクトの企画・設計・発注・施工にわたるCM業務
(5)コンストラクションマネージメント (株)オープンネット ・CM方式による住宅建設
(6)その他
不動産購入コン
サルティング
さくら事務所 ・不動産コンサルティング
・不動産調査業務、不動産売買契約立会業務、不動産事業者支援業務
・不動産投資・経済セミナー、執筆活動
(6)その他
入札支援
住まい屋 ・商業建築および木造住宅の設計
(6)その他
工事監理
(株)住宅のマザー杜 ・工事監理
(6)その他
不動産共同購入
代行(土地紹介)
(株)ニード ・不動産共同購入代行、不動産トータルコンサルティング、住宅設計、戸建分
譲事業
((4))金融関連サービ エスクローサービ (株)メサイアインキュベーション ・建設に関するエスクロウ業務
・不動産取引や住宅ローン取引に関するエスクロウ業務
・リフォーム・内装工事に関するエスクロウ業務
・ソフトウエア開発に鮨するエスクロク業務
出来高システム
(購入者向け)
(株)クリックエンクープライズ ・工程表の作成と支払予定表の作成(工務店・クリック)
・資材契約・施工契約に基づく支払信託契約締結(顧客・工務店・クリック)
・請負工務店・クリック・支払先と契約内容確罷(工務店・クリック・支払先)
証券化 (株)新日本建物 ・マンション分譲、戸建て分譲
・ビル・マンション・住宅等建設の請負工事
・建築設計・建物管理
・不動産鑑定業、不動産投資顧問業
((5))運用・管理関連ビジネス コンバーション フィットリアルエステート(株) ・コンバージョンビジネス
・不動産賃貸、管理業務、不動産・建築に関するコンサルタント業務
コンバージョン (株)リブラス ・コンバージョン事業
・賃貸サポート事業(賃貸住宅管理会社に対する滞納家貸保証システム提供)
リフォーム (株)ミラクルスリーコーボレーション ・既存の住宅を生かして増築する特許「ミラクルスリー構法J等の業務提携及び
販売
・自社では施工せず、特許を活用し権利及びパテントを販売
リユース (株)やすらぎ ・中古住宅販売
・不動産貨貸
((6))その他 環境・健康配慮住宅 (株)高千穂 ・環境配慮型・自然素材の住宅用建材の商品開発及び販売

文献調査により抽出された企業(7)
No. 分類(1) 分類(2) 企業名 事乗積要 H15
追加
59 ((3))消費者エージェント (5)コンストラクションマネージメント (株)オープンネット CM方式による住宅建設を行なう。住宅メーカーや工務店を通さずに専門工事会社と契約を結ぷ分離発注によるCM方式を取っている。
CMのノウハウを公開しており、会員の情報交換を通してシステムの向上を図っている。
60 ((3))消費者エージェント (6)その他不動産購入コンサルティング さくら事務所 独立系の個人向け不動産コンサルティング会社。住宅購入を検討している一般消費者向けに、(1)新築マンション内覧会立会い、(2)購入物件チェック、(3)契約書類チェッタ、(4)不動産調査報告、(5)売買契約立会い、(6)残金決済立会いを行う。このほか、不動産投資・軽済セミナーや勉強会も主催している。  
61 ((3))消費者エージェント (6)その他入札支援 住まい屋 量販ストアや店舗などの商業建築設計が本来の会社だが、工務店70社を会員組織して木造住宅建築の入札に取り組んでいる。  
62 ((3))消費者エージェント (6)その他工事監理 (株)住宅のマザー牡 一戸建てを中心に工事監理をする会社で、中高年に絞って人材を集めており、12人の社員は全員60歳以上となっている。ゼネコンや設計会社などで長年勤務した技術者や法務関係者ばかりを東京人材銀行で募集して採用しており、住宅などに対する専門知戦を有する定年退職者の受け皿にもなっている。  
63 ((3))消費者エージェント (6)その他
不動産共同購入代行(土地紹介)
(株)ニード ・不動産トータルコンサルティング、住宅設計・分譲・建材の輸入代理を行う。・「ロケーションクリエイトサービス」と呼ばれる不動産共同購入代行業が主要業務。複数の顧客情報を集め、それぞれのニーズに合わせて分譲し、提供する。・建材「セニデコ」の輸入販売も手がける。  
64 ((3))消費者エージェ ント (6)その他
コーポラティプハウスプロデュース
(株)アーキネット 余分な費用をできるだけ抑えるために、会員募集からプロジェクト案内、事務連絡など、インクーネットペースで行い(特許申請)、コーポラティプハウスの提供、コンサルテーションを実施している。この他、政府の住宅・土地政策の立案、兼稼動不動産の特用(不良債権閉居)から渋谷Q−FRONT、21森ビル(ベンチャー床)、レクセルガーデン愛甲石田といった案件のプロデュースを手がけている。  
65 ((3))消費者エージェ ント (6)その他コーポラティプハウスプロデュース (株)都市デザインシステム コーポラティプハウスの企画コンサルティングを行うほか、建築設計及び監理、建築・不動産に関するコンサルティング、建物管理に関するコンサルティング、不動産売買・交換・貨貸・管理及びその仲介を実施している。  
66 ((3))消費者エージェント (6)その他コーポラティプハウスプロデュース (株)キューブ コーポラティプ住宅で、住み手と共に考える住宅づくりに力を注ぐ。定期借地権を使い通常より4〜5割安くした「スケルトン定借方式」に着目し、地主と借り手をつないで一戸建て感覚の集合住宅を造る。
67 ((3))消費者エージェ ント (6)その他コーポラティプハウスプロデュース シティサイエンス コーポラティプマンション事業を辛がけており、入居者が管理会杜を選定するシステムの提供も行っている。入居者を複数のグループに分け、インタビューとフリーディスカッションで入居者の管理についての意見を抽出し、それを同社がとりまとめ、組合総会にかけて管理内容を決定するその上で、複数の管理会杜からプレゼンテーションを受け、組合員の投票こよって管理会社を選定する。管理組合の結成準備を竣工前に行うことで、入居後直ちに管理組合を機能させることができる。  
68 ((3))消費者エージェ ント (6)その他
住み替え支援
(株)福祉村 「高齢者の住まい支援ネット」
・物件情報の提供(自立型住宅、介護方住宅)

・リフォーム事業者情報の提供(バリアフリー化、耐震補強、2世帯対応など)

・老後の住み替えの総合的案内

・住み替え後の従前住宅の活用・売却・賃貸化サポート

を行っている。不動産、建設、住宅、リフォーム、医療、造園、自動車販売、コンビニエンスス
トアなどの企業が加盟している。
 

3.2 調査対象の概要
3.2.3 消費者エージェント
(10) (株)オープンネット(平成15年度ヒアリング)
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4.参考資料(平成15年度ヒアリング議事録)
4.2.8 オープンネット

回答者:代表取締役社長 山中 省吾、取締役 武藤 昌一
   (株)みずほ建築事務所 山田 雄一(オープンネット登録設計会社)
   (株)本間総合計画 本間 貴史(オープンネット登録設計会社)

(1)オープンネットの機能について

 オープンネットが担っている機能は4つある。@登録している設計者の支援、A専門工事会社の組織化、B建材等の流通を統合し効率化を図る、Cオープンシステム広めていくためのセミナーや講演活動など。

(2)オープンシステムについて

 このシステムは設計者が施主の代理人として業務委託を受け、元請会社を介さずに専門工事業者と直接契約を結ぶ仕組み。

 現在の登録設計者数は282件。TVや記事でこのシステムを知った設計士が多い。設計事務所あたりの月会費1万円で、ロイヤリティは一切もらっていない。我々はどんどん公開している。公開することによっていろいろな情報も入ってくる。情報の精度を高めていくほうが、オープンネットにとってはプラスになる。

 昨年実績は371棟でそのうち、住宅(集合住宅含む)が99%を占める(商業ビル等の実績有)。構法としては木造の在来軸組構法が一番多いが、どのような構法にも対応可能である。

 オープンシステムは施主・設計者・専門工事会社のすべてにとってよいシステムである。通常のやり方では工務店が安い材料を使ったり、専門工事会社を叩きすぎていたりできちんと能力を発揮してもらえない実情があるのだが、このシステムにより、専門工事業者は工務店から無理な発注をされない。また、設計者と工務店の現場監督との意思疎通が上手く行かないことがあり、現場の職人にきちんと情報が伝わっていないケースがあるが、このシステムでは設計者と職人がダイレクトに話すので、設計したものよりも完成したものが悪くなることはない。

 工務店の利益を除くことによって、施主は建物自体にお金をかけることができるようになる

 設計者は施主との関係は非常に濃密だ。打ち合わせの記録をすべて残していくと、契約から引き渡しまででかなりの量になる。施主に対して、設計は今日どういう工事を行った、ここもチェックしたと、そういう報告をほぼ毎日行っている。

 事務所によって若干異なるが、なるべく現場には毎日もしくは週2〜3回くらい足を運ぶようにしている。そうやって現場に足を運ぶと設計者と専門工事会社のとの拒離がものすごく近くなる。現場は大体1時間圏内。それくらいのエリア範囲でないと、極め細やかな対応は難しくなる。

 但し、オープンシステムでは業務の進め方を標準化してはいないので、現場に通う回数や進め方は設計者それぞれが決める。以降に話す見積りの取り方や価格の決定方法などもすべてそれぞれに任されている。それぞれの設計者が試して良かったと思う方法は、積極的に公開されており、情報共有を図っている。良い方法の蓄積が増えてきたので、そろそろ書類書式などの標準化を行っていこうと考えている。

 オープンシステムはある程度の期間行って経験を積み、効率的に業務ができるようになると、設計事務所の経営上にもプラスに働いてくる。そういった事務所の方が圧倒的に多いのではないかと思う。オープンシステムで順調にいっている事務所は、1年間に一人で3〜4棟やっている場合もあるので、そういうところは経営状態も良くなっている。

(3)専門工事業者について

 設計者と専門工事会社には一般的に接点がないので、このシステムをスタートさせる時はかなり苦労した。最初、50社くらいの専門工事会社にアポイントメントを取って、説明をしに出向いたところ、8割くらいが協力をしてくれた。

 専門工事業者の良し悪しは各地域の人じやないと分からないので、その地域の会員設計事務所が開拓をし、ネットワークを拡大させている。例えば、石川県では営業に来た会社に対し逆に営業を行い、最初の年は100社前後に声をかけた。

 専門工事業者のネットワーク「GyousyaBank」があり、現在の登録業者数は680社。基本的にはウェブ環境がないと入れないようになっている。GyousyaBankに入るとeメールで会員設計事務所の見積り参加アナウンスが自動的に配信される。営業をしなくても、見積り参加希望を申し出れば参加出来る。また、専用ホームページで会員設計事務所が行っている業務物件情報を閲覧することも出来る。会員以外の専門工事会社も自由に見積り参加できる。

 分離発注を行っているので、施主が契約をする業者数は木造住宅だと約20〜30社、ビルになると40〜50社になる。ただ、ビルの場合、付帯部分はゼネコンにお願いすることもある。今は1業種につき2〜3社くらいだが、将来的にはもっと増えるだろう。

 業者の選定は入札で行っているが、5〜10年続けていくとある程度は固定されていくのかもしれない。ときどき新しいのが入って、部分的にちょっと入れ替わることはあるかもしれないが、急激な変化はない。

 ある程度業者が固まってくると、お互い勝手が分かってくるので、やりやすくなる。業社側もこういう見積もりを出さないと通らないとか、工事に入ったら自分たちは元請けとしてできることもやらなくちやいけないという意識を持っているようである。

(4)見積りについて

 設計図書が固まった段階でGyousyaBank登録業者や他の専門工事会社に見積り依頼をする
 見積り依頼の決まったフォーマットはまだなく、今はそれぞれの事務所が作成している。お互いに情報を交換し合い、各々がやりやすい方法を取り入れている。今後は統一の標準書式を作成していこうと考えている。

 ゼネコンが適正な利益取り、下請けに無理を言わず、下請けがきちんと生活できる額に設定している場合、オープンシステムを使用した方が確実に安くなる。

1つの工事に対して何社か見積りを取り、検討比較することによって価格を抑えるようにしている。基本的には安い見積りを出した業者を採用する。そして、出てきた見積りに関してはなるべく交渉を行わないようにしている。なぜならば、業者側も目一杯の額を出してきているので、それをさらに交渉するのは失礼な話。しかし、中には交渉を行っているところもあるようだ。

 多くの場合は、積算ミスだったりするのだが、業者の中にはこの仕事が欲しくて、意図的に極端に安い見積り(通常60万円かかる塗装工事を30万円で)を出してくるところもある。

 業者にとってもメリットがある。30日サイトで出来高完成払いとしており、現金で100パーセント入ってくるので支払い条件が非常によい。そして、施主の顔が見えるようになるので、仕事自体が楽しくなる。

 専門工事業者にとって施主との直接契約は嬉しいようで、特に仕上げ工事、当然リフォーム需要というのを視野に入れているからだと思うが、特に仕上げ工事の業者さんは熱心な方が多い。一度実績を残すと、リフォームの時にも発注してもらえる可能性が高くなる。

 支払条件の方式は設計事務所によってあまり異ならず、1業種完成すると月末締めの翌月残金払いを行うのが基本で、場合には金融機関の借入れの関係で2ケ月待ってもらう業種もある。その辺の調整は設計事務所と施主とで行ってもらう。見積りの際に支払条件をきちんと示し契約を行うので、専門工事業者からの信頼も厚く、評判がよい。

(5)設計者の機能について

 着工し始めてから、設計者の中には進捗状況を全部ホームページで発表している人もいるがまだ少数派というのが現状。進捗状況の報告はウェブ上ではなくても行っていくのは基本。

 設計者にとって20業者の連携を取るのはさほど難しくもなく、苦労も少ない。というのも、大工が要だからである。

 ただ、このシステムで行うと普通よりも工期が1〜2割(通常は4〜5ケ月、長いと5〜6ケ月)長くなる。契約から完工まで大体1年くらいかかる。通常住宅メーカーは工期を圧縮して利益を出しているのだが、このシステムでは1業者が終わって次が入っても別にいいので、工事のつながりということでは、工期を長めにとればそんなに問題はない。

(6)設計者がオープンシステムで受託する棟数と報酬について

 設計者が年間に設計する数はばらばら。慣れた設計者で4棟ぐらいが限界。初めてオープンシステムに参加するという設計者には年間1棟が精一杯。1棟に集中して、勉強してもらう。こうなると事務所の人にとっては稼ぎにならないが、いわゆる教育期間のようなものと納得してもらう。

 設計者の報酬の算定は工事金額ではなく面積を基本とした計算式で算出する。基本料金が150万で、プラス平米あたり22,000円も設計料、設計監理費としてもらっている。工事費と直接リンクしていないので、建物の坪単価が高い案件では、お客様は割安に感じると思う。結局、設計者の方の手間は、仕様が高級になろうともあまり変わらず、ローコストの極限でやる方が手間のかかることがある。

 受注の多かった上位20社の設計事務所のうち18社はオープンシステムだけで生計を立てている。全体でみると、30〜40社くらいがオープンシステム1本で行っており、そういった事務所がだんだんと増えてきている。ただ、オープンシステムを導入するかどうかは、最終的に は施主の判断である。

(7)オープンシステムを使用する上での施主側のリスクについて

 分離発注に興味ないというお客さんに対して勧めることは特にしない。お客様自身が分離発注するということがどういう意味なのか、一括発注との違いをきちんとご理解いただかないと、トラブルの元になる。われわれは請負をやっているわけではないので、お客さんが自己責任でやらなければいけないという側面はあると思う。直営工事と一括発注の違いはきちんと理解されていないといけない。

 何か事故が起きた場合に施主が全て責任を負うということではないが、例えば床に誰がつけたのか分からないキズがあるとする。補修をしなければならないが、いったい誰がお金を出すのか、と考えたときに、誰がやったかわからないキズに対しては施主が責任を取らなければならない。

 分離発注というのはどうしてもそういうすき間のリスクがあるので、そういったところもきちんと理解されていないとトラブルに発展しやすい。

 設計者の中には契約前に恐がってリスクをお客様にきちんと話せていない人もいる。いざ、何かトラブルが発生した際には大変なことになる。その辺のリスクをお客様にきちんと説明し、納得してもらうことが重要だ。

(8)補償について

 オープンネットでは「オープンシステム建物補償登録制度」を99年1月から始め、お客様に安心してオープンシステムを採用してもらえるようにした。

 設計事務所や専門工事会社の倒産、工事期間中の対物的・対人的な事故(塗装が飛んで駐車場の車を汚したなど)などの補償を行っている。

 ただ、事故性のものは保険で補償しやすいのだが、瑕疵保証となると難しい。たとえば雨漏りや無垢の材料を使ってひびが入ってきたなど。施主にとってはひびが入ったのは欠陥かもしれないが、構造的には全く問題ない。それをどこまで補償するかというのはすごく難しい。
 我々の補償は、設計事務所と専門工事会社に対しての補償で、施主に対しての補償ではない。雨漏りとかは、雨を漏らした原因、瓦の施工がちょっと悪かったりとか、その場合には瓦屋さんが直すのが基本。でも、雨が漏ることによっていろんな被害が出るので、それが補償の対象になる。

 ところが、逆にたとえば壁を塗ったとする。非常に施工が乱雑で、これではプロの仕事といえないと。施主から見るとそれは欠陥ということになる。でも乱雑な仕事などは補償すべきではないと思っている。もし補償するのであれば、少なくとも一定のプロセスを経て、きちんとチェックをした上で、欠陥だと認められた場合、補償しても良いとは思う。これからその基準をつくっていけそうだと思っている

(9)競合他社について

 地域やインターネット上で10社ぐらいかたまっているというグループがいくつかあるようだが。組織の規模でいうと、当社が非常に大きい。

(10)セミナーについて

 一般向けの説明会の開催を主に行っている。設計者向けのセミナーというのは「『建築事務所のピュアCM/分離発注』研修会」が初めてである。3〜4年前に設計事務所向けに説明会を行おうとして、名古屋で1回行ったのだが、6,000通案内を出して、来たのはたったの3社。全く関心がなかったようだ。今はDMとか打たなくても、東京だったら百を超えるぐらいの反応がある。2〜3年でまったく状況が変わってしまった。

 研修会はべつに事務所を集めるためにやっているわけではなくて、あくまでも勉強しようという、純粋な研修会である。それを外に開くことによって見えてくるものがたくさんあるので、外にも開きながらやっているというだけで、会員を増やすために広く募っているわけではない。

 普通、住宅のフランチャイズの会社とかでもノウハウは絶対外には出さない。しかし我々は、全部公開している。できるかぎり公開してやっていこうということで進めている。

(11)お見合いネットについて

 施主から依頼があった場合に、「こういう業務をやってみたいと思う方はいらっしやいますか」と設計者を募って紹介する仕組み。掲示板を使ってお客様の要望を設計事務所がエントリーする前に知らせ、その上でエントリーする事務所はどうするか、というかたち‘にしている。

 利用件数は一番ピークの時で月30件ぐらいの申込みがあった。地域によって偏りがある。設計事務所数も一番多いが、やはり関東が多い。

(12)今後の課題について

 専門士事業者に関するデータの整備。現在は地域の中で情報交換としては行われている程度評価の仕方は今から構築していかなければならないが、すでに設計者の認定制度は始めており、これを業者にも応用できると思う。会員設計事務所に対する認定制度では、CPD単位を与えている。

 標準書式の整備も行う必要性がある。一連の業務フローの中で膨大な書類が発生するが、全部ウェブ上で引き出せるようにしたい。また、設計事務所が受託報告を行うと全部その設計事務所がデータベース化されていくようにしたい。

 契約書のフォームなど現在も一応あるが、少しずつ使い方が違うので、全部統一しようと考えている。特に、専門工事会社の情報は会社名、住所、電話番号、振込先、担当者名、携帯電話など、たくさん書かないとならない。しかも、1つの物件で60社が参加するとなると、書く量が半端ではない。それをデータベースから読み込んで、たとえば電話番号だけ入れると会社名など全ての情報を引き出すことが出来るという風にしたい。そうすることにより、設計者の事務的負担が軽くなり、設計の部分に力を入れることができる。

 今は各設計事務所のモラルに任せているところがある。例えば、設計図面で言えば、実施設計では我々レベルだと50枚前後の図面を書く。ところが5〜6枚でも不思議とそれなりの見積もりがとれ、それなりに検討を進めることができる。だから、それを一定にするためにもウェブで統一するというのは意味がある。

 とにかく事務作業量が多く、見積もり業者を増やせば増やすほど、図面もそれだけ配らなければならないし、図面を渡して見積もってもらうだけでも大変。40〜50枚ある元の図面から、それぞれの業種にあった図面を選んで渡し、見積もってもらうので、そういう作業もばかにならない。その辺もウェブで解決出来るようにしたいと思っている。ウェブの中に、たとえば「○○邸の見積もり案内」というところを設け、その中に全部の図面(pdfファイルなどにしておく)を入れておいてダウンロードして必要な図面だけとってもらうようにしておく。

 基本的にはオープンネットと施主は契約関係にないのだが、今後、拡大するにつれて、オープンネットがお客様から責任を問われるという可能性はでてくるであろう。弁護士の解釈にもよるが、限定した範囲で責任をとればいいとはいっても、そういう訳には行かなくなるケースも出てくるだろう。

 ハウスメーカーのようにマニュアルつくってその通りにというわけにはいかないがあるのだが、教材のようなものを作成して、会員の事務所に対して指導や研修を行っていく必要性があると思う。

 建築業界はどんどん変化し、以前にもまして競争の世界になっている。だから設計事務所が従来みたいに設計だけやり、それ以外のことはできない・やらない、ということがこの先、はたしてどこまで通用していくのだろうか。そういうものが通用する事務所も中にはあるだろうが、それは3万社の中の1割か2割程度にすぎない。残りの8〜9割の設計事務所は淘汰されて行くのかもしれない。そうなってくると、こういった能力を身に付けることが、設計事務所が社会的に認めてもらう1つの方法になるかもしれない。

 今は年間400棟程度しかないのであまり機能していないが、これが1,000棟とか2,000棟になってくると、おそらく建材メーカーも放っておかないと思う。そういったところと提携し、安く建材を入れたりし、手数料等でビジネスをしていきたい。

 また、教材等をつくって会員・会員以外の事務所への販売、ウェブ上でソフトを使用して業務フローを簡略化するという話をしたが、それを有料にするなど、いろいろビジネスチャンスはあると思っている。

【質 疑 応 答】

Q:御社の仕組みだと、設計者と施主が従来元請が担っていた機能を行うことになるが、具体的にどのような業務が増えるのだろうか。

A:そんなに極端に増えるわけではない。従来からまじめに設計監理の仕事をしている設計者なら、その延長でできる。

 今までは施主と工務店が一回契約を交わすだけで済んでいたが、様々な業者と契約するので手間はかかる。業者選択や業者との契約金額を把握するなどの作業は増えるが、設計事務所がまるっきり知らない分野ではないので大変ではない。


Q:一般論として、ハウスメーカーの決まった工法ばかりやっている職人が増え、技術力が落ちていると言われるが、そこは問題にはならないのか?

A:大工の腕は本当にピンからキリまである。極端に言ったら釘しか打ったことない人や墨付き出来ない人も中にはいる。ただ、今の段階ではまだそれぞれの地域に、良い大工が残っている。40〜50歳代の棟梁が20代の職人を使って指導し、技術はきちんと伝承されていると思う。


Q:一番技術力に差があるのはどの業種か?一番バラツキが大きいのは大工なのか?

A:大きいのは大工。その他の業種は、基本的にはそんなに差がない。というのは、どの専門工事会社も必ずどこかの工務店なりハウスメーカーさんの下請けとして仕事をしている。普段付き合っている元請けが1社だけという下請け会社はめずらしくて、ある時はA社と仕事をしてある時はB社の発注を受ける。複数からの仕事を受けているので、そんなに技術的な差がありすぎると元請けから使ってもらえない。


Q:オープンネットのコアとなって動いている設計者の方々はどれくらいいるのか?

A:研修と業務フローの整備についてはCPD委員会というのをつくっており、コアで動いているのは4名である。システム改善プロジェクトには講師として20名程度に参加してもらっている。


Q:オープンネットとして住宅性能に対する対応を何かしているのか?

A:今のところ統一して品確法や10年保証など、オープンネット側が全部責任持つと言うつもりはない。将来的にも、そこまでやってしまうとハウスメーカーと違いがなくなる。そもそも契約しているのは個々の設計者で、彼らの契約に対して当社が責任を持つのに月1万円の会費では責任をとるのも難しい。もし責任持つのだったら契約した金額の1割ぐらいもらわないとならなくなる。そういう気は全くない。


Q:1時間圏内が商圏ということだったが、他の事務所とエリアが競合することはないのか?

A:一定のエリアの中に設計事務所が増えることによって受託数も増えてくる。普通は、競合同士情報交換は行わないのかもしれないが、オープンネットのメンバーはお互い情報交換したり、改善点を指摘しあったりしている。営業に関して共同で行っている。そのほうが効率もよい。ある程度団体でまとまっていると、お客様も安心感が得るようだ。だが、お客様への案内はセミナー開催や内覧会の案内をただ送るだけにとどめている。やりすぎると、住宅メーカーとの違いがなくなってしまう。我々はあくまで設計者、設計監理の延長という考えで行っている。
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