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「CCI」 2005年9月号・・・建築士の卵とのコラボレーション物件 E
  古い小学校の梁材の行方は・・・/鰍ンずほ建築事務所 所長 山田 雄一 氏

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続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

建築士の卵とのコラボレーション物件 E

古い小学校の梁材の行方は・・・


寄稿
鰍ンずほ建築事務所 所長
山田 雄一 氏
 前号では、「いよいよ大改修工事スタート」ということで、工事の前半部分等について述べた。今回は、工事の後半の概要、また、捨てられるはずだった既存梁材が飲食店のカウンターに!高専生とのバーベキュー大会、OS仲間での大見学会等を紹介していきたいと思う。

●仕上げ工事

 大工さんの工事は、いよいよ終盤となり造作工事・仕上げ工事となってきた。中央の4.5畳の和室の上部踊り場空間を経由して、2階への階段がかなり特徴的である。大工さんはこの階段を設置するのに、かなりの時間を要していたが、上り下りしやすい開放感のある、いい階段になったと思う。

 床は当然、無垢材を使用し、吹抜け空間の壁は和紙貼りとした。吹抜け空間があまりにも住宅としては大きく存在感がありすぎるので、計画時より考えていた大きな円の穴が開いた仕切りも実際に設置された。

 この頃より私とM先生、学生さんとは、外部の詳細な計画について話し合い、施主であるHさんご夫婦とも相談し外構の詳細設計を進めていった。具体的には、隣接する作業小屋との動線の関係、外部や道路からの視線を、建物内部に入れないようにする塀の設置場所・方法、また建物のスケールが巨大なので、建物と吊り合いの取れる玄関アプローチの長さ、樹木の種類、配置場所などを詳細に決めていった。
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●既存吹抜けの解体した梁材の行方

 先月号の最後に書いたように、解体した梁材は山中代表の助言もあり、オープンシステムで設計中だったレストランのカウンター材にしようと私は決めた。

 このレストランのオーナーシェフ(以下、マスターと称する)は、料理界では素晴らしい経歴を持ち、すごく人間味のある方である。また、マスターの奥様も(以下、マダムと称する)深い愛情を持った才色兼備な方である。

 既に、このレストランの週に一度の定休日に、設計の打合せをしていたので、早速マスターとマダムに、このような素晴らしい梁材が出てきたことを言い、これをカウンターにしましょう!と提言した。「それええな!それでいくでー!」と、即決。(マスターは大阪出身なので関西弁)専門工事業者である家具屋に、経緯を話して製作することになった。

 数年前からマスターとママ、マスターのご両親が住んでいた、3階建ての1階部分(車庫)を改装、また庭部分に2階建てを増築し、レストランとした。

 ここでマスターの経歴を紹介したいと思う。マスターは関西の有名ホテルで、20歳代で副料理長に抜擢され、その後、金沢のあるホテルに副料理長として招待された。7年前に金沢市内のある貸し店舗にて独立した。その頃から自宅に店をつくるのが理想だったらしく、今回それが実現したというわけである。

 厨房のこだわりはさすが一流料理人である。数百人分のケータリング料理も、なんなくこなせる設備となっている。

 また、音楽が大好きなマスター。若い頃はプロのバックバンドで演奏をしていたらしい。音響設備は当然一流品ばかりである。たまにではあるが、ライブもする「万国料理:むささび亭」。近隣に住宅も存在するため、設計ではこの「音」を、外部に出さないように細心の配慮をした。

 このレストラン「万国料理むささび亭」は、石川県の金沢近郊に立地している。世界各地の料理が堪能でき、イタリアでいうバールとレストランテが融合したような、おそらく日本ではあまり例の無い飲食店であると思う。常に老若男女問わずにお客が訪れ、いつも満席に近い状態である。これはマスターとマダムの人柄も多いに関係しているであろう。外人の方もよく食べに来るし、ライブなんかもやっていたりして、そう、「誰でも立ち寄れる、大人の遊び場」という表現が一番マッチングしているかもしれない。
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 解体された梁材は、家具屋さんにより綺麗に加工・取り付けされて、今では店の中で圧倒的存在感をもって再生されたようだ。店のプレオープンの時には、関係した専門工事業者、その会社の実際に仕事をした職人さん達全員を招いてのパーティーを、マスター・マダムが開いてくれた。総勢80人以上となり、盛大で楽しいプレオープンパーティとなった。

 解体された梁材、実はまだ残っていた。オープンシステムの仲間であり、懇意にさせていただいている金沢の(有)風建築工房:笠島氏が、ちょうど同じ頃、金沢市内に「うどん屋」を建築中だった。このうどん屋さんは、こだわりをもっているうどん屋さんであり、店内のカウンターや机に無垢材を使いたいということであった。名を「古納屋(こなや)」といい知る人ぞ知る店。既に皆さんもおわかりだと思うが、残った梁材は、全てこのうどん屋さんのカウンターと机に再生された。これで解体された大きな梁材は、捨てられることなく有効に使われて活躍していくことになり、私としては満足であった。

●学生達とのバーベキュー、床塗装

 話を現場に戻そう。同窓会の主催で、現場で学生達にも参加してもらい、バーベキュー大会を開催した。学校からは、学校専用の大型バスで現場に来てもらい、最初に施主Hさんの挨拶、本田建築学科同窓会会長の挨拶、私からは概要説明をして、その後現場を見学してもらった。その間、我々はバーベキューの準備をして炭火を熾すのに悪戦苦闘していた・・・が、なんとか無事にバーベキューをすることができた。

 やはり学生の食欲は素晴らしい。現場の見学では、Hさん、職人さんや当事務所のスタッフと話したりしながら、現物で目の前で見る圧倒的吹抜けの存在感に度肝を抜かれていた。また、少なくとも自分達が携わった建築物の実物が、目の前で建築されているのであるから、感動してくれたと思う。

 また、現場の竣工間際には、学生さんと一緒に床の無垢板の塗装を行った。

 数社の専門工事業者も参加していただき、最初に塗り方を専門工事業者に指導してもらい、皆で2階から順番に自然系塗料を塗っていった。自然系塗料なので匂いの心配も無く、作業は順調に進んでいった。

 お昼ごはんは、日本海の美味しい魚介類たっぷりのお寿司をHさんにご馳走していただき、学生達も大満足だったようだ。

 予想以上の学生が来てくれたので、床塗りは早めに終わり外部の塀も塗装した。

 このように、各学生が様々な事に参加して、学校では教えないであろうことを経験していくということは、非常に大切だと思う。その必要性を痛切に感じているM先生、理解あるお施主さんHさんがいたから実現できたことである。そしてなにより、実践で仕事をしている我々が積極的に参画していくことで、建築系の学校の反映につながり、どの程度の効果があるかは未知数であるが将来の建築界を背負っていく人材を育てることの、ほんの少しでも協力できたのではないかと思うのである。
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●オープンシステム北陸会議の現場代見学会

 2004年の12月の初旬。オープンシステム北陸会議の合同定例会、忘年会を企画した、この建物の竣工前の見学会も兼ねて。北陸の会員はもちろん全員参加だが、札幌から、仙台・東京・愛知・岐阜・大阪・京都など全国各地のOS会員に参加していただき、山中代表、武藤取締役、松本氏にも来ていただけることとなり、北陸会議過去最大の、盛大な見学会・忘年会となった。

 OS北陸合同会議の後の忘年会は、当然、「万国料理:むささび亭」で開催。余興として、専門工事業者の有志、私と当事務所のスタッフによる、即興バンド演奏を恥ずかしながらも披露した。

 また、米子のON鰍フ松本氏は、ギターが相当上手いということで、急遽ミニコンサートをしてもらった。さすがに我々の即興バンド演奏とは違い、上手であった・・・。(地元米子では、定期的にライブに参加しているらしい。)

 志が同じ仲間と飲む酒は、言葉では表現しにくいが本当に美味いものである。忘年会はマスターの料理、酒が美味い事も手伝い、多いに盛り上がり、山中代表を囲んでいろいろ皆で語り合った。

 同じ志をもった仲間が、理想を語り酒場みたいなところで議論する・・・何やら、最近読んでいる、ヨーロッパ文学の本の一説に出てくるような光景だと思った。
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オープンシステムの設計事務所会員は、現在では300社を超えた。中でも北陸の会員は非常に纏まっており、統計的に会員数に対する受注率、業者バンク数等は全国でもトップクラスである。とはいえ、まだまだがんばっていかねばならないことも事実である。

 最近では、沖縄の「青空建築設計工房」が、飛躍的にがんばっており沖縄の会員数も増えている。北陸も負けてはいられない。

 以前、山中代表と話をしていたとき、「そのうち、大手設計事務所が入会してきたら面白いでしょうね。」なんて事を冗談半分で話していた。しかし、それがついに現実のものとなった。数百人規模の日本の大手設計事務所が入会したのである。近い将来、きっと何かが動き出すかもしれない・・・。そんな予感が最近現実味をおびてきたように思う。

 我々は、自分の周りに会員が増えたら、仕事量が減る、仕事の奪い合いになるから嫌だ・・・。という小さな考え方はしない。会員が増えれば増えるほど、このオープンシステムが世の中に認知され、大きくなっていくであろうという考え方、またそういうスタンスに立って、日々業務をしている会員が殆どである。


 次回10月号は、いよいよ最終回。この建物の、抜粋した完成写真を紹介し、引渡し時のエピソードを交えて話していきたいと思う。また、これからの建築家が目指すもの、国家資格者としての責務、、分離発注のオープンシステムの可能性などを、私なりの考え方でまとめたいと思う。


DATA
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山田 雄一(38歳)
鰍ンずほ建築事務所 所長
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■プロフィール
1967年 石川県金沢市生まれ。
国立石川工業専門学校 建築学科卒業。
(社)石川県建築士会青年委員長、
建築士会東海北陸ブロック青年建築士協議会運営委員、
(社)日本建築士会連合会青年委員を歴任。
現在、(社)石川県建築士会青年委員会相談役、
まちづくり委員会副委員長。
(社)日本建築家協会正会員。
オープンシステムネットワーク全国会議北陸代表幹事。
石川工業高等専門学校建築学科同窓会「ほおづえ会」副会長。
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■連絡先
鰍ンずほ建築事務所
石川県金沢市諸江町中丁303

TEL:076-237-3286
FAX:076-238-9693
E-mail:mizuho@spacelan.ne.jp
URL:http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/hokuriku/ishikawa/mizuho/
 
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