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建築革命宣言!価格の見えるグッドデザイン(8)
  「CCI」 2006年12月号 CUBE+TUBE#02/(株)アトリエ・ラッツ 代表取締役 古後 信二

CCI 2006年12月号


続 『建築革命宣言!』 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜

価格の見えるグッドデザイン

第8回 CUBE+TUBE#02


寄稿
株式会社アトリエ・ラッツ 一級建築士事務所
代表取締役・最高経営責任者
古後 信二 氏

●雑誌掲載を見てのオファー

 我々の出世作となった「エコ・キューブ」が一般向け住宅情報誌に掲載されたのを見た事が、クライアントと我々の出会いであった。

 御電話を頂きスタート。遠隔地ではあったが、交通費を別途御負担頂ける事の確認のうえで、交流が始まった。

 「エコ・キューブ」にクライアントが惹かれたのは、コンパクトな立体的ワンルームであったほか、「エコ・キュート」の機器を開発している企業に御主人が勤務していた事も大きかった。「エコ・キューブにエコ・キュート」。

 その明快なゴロ合わせのような事も、我々の関係性を良好にさせてくれたのである。

 奥様がハウスメーカーに勤務していた経験があり、価格の不透明さと多重下請構造に疑問を持った経験もあったため、オープンシステム手法にも理解が早く、ぜひとも、オープンシステムで「エコ・キューブ」を建築したいという御要望であった。
 
CUBE+TUBE#02 外観1・2

●大分と愛知の距離

 完成時期にゆとりがあり、土地もまだ確定していない段階であった。定期的に情報交換をしながらゆっくりとした家づくりが進行していった。

 奥様の実家が宮崎県という事もあり、帰省の途中に大分に立ち寄っていただき、我々の作品に御案内しながら、コミュニケーションを深めていった。

 我々にとって、愛知県という場所はとてつもなく遠い。

 ここまで遠い物件も初めてであった。とはいえ、距離のハンデを越えて我々にラブコールを送っていただけるのは建築家冥利につきる。

 オープンシステム手法の場合、工事がスタートすれば、ほぼ毎日現場に通う必要がある。我々が長期出張で愛知に赴くか、愛知県のオープンネット会員設計事務所とコラボレーションするかの2つの方法を模索しながら、電話やメールによって、各種打合せを進めていった。

●ネットワークによる土地探しのフォロー

 土地探しにもアドバイスを求められた。といっても、我々には土地勘もないので、説得力もない。

 そこで、オープンネット会員である「大原一級建築士事務所」の大原志津江さんの御協力を仰ぎ、土地探しのフォローをお願いした。

 オープンネットは全国200数十社の建築家のネットワークでもある。こういった時に威力を発揮するのである。

 こうして、無事に希望地域にいい土地が見つかり、先行して土地購入が実行された。

●遠距離における設計打合

 交通費の御負担を軽減するため、設計段階の打合せはすべて郵送がファックス、電話、メールで進められた。

 直接対話できない不安もあったが、我々の提案を読み取っていただき、それに対する熟慮された返信が届く、という事をくりかえし、基本設計、実施設計と進行していった。
 
CUBE+TUBE#02 インテリア1

●CUBE+TUBEシリーズ

 エコ・キューブからのスタートであったが、要望を整理するうちに、「キューブ+チューブ」と命名した方向性へと変化していった。「キューブ+チューブ」シリーズは、エコ・キューブの持つ立体的なワンルーム構成の魅力と、エコ・チューブのフレキシビリティを融合させた新しいシリーズである。先行して第1号が大分市において2006年3月に完成している。

●オープンシステムの決断

 問題は、発注方式であった。実施設計段階では、まだ、オープンネットのコラボレーション事務所が確定しておらず、我々の体制も4〜5ヶ月、担当の長期出張という準備が整っていない状況である。

 クライアントの頭にも、工務店一括のほうがいいのかもしれないという考えが浮かんできたようであった。

 しかし、当初から、オープンシステムに関心が強かった事もあり、また、タイミングよく、コラボレート事務所が見つかったため、熟慮のうえ、オープンシステムでの建築を決断していただいた。

●松岡設計事務所とのコラボレート

 コラボレート事務所は愛知県を拠点としている「株式会社松岡設計事務所」の松岡由紀夫さんにお願いできる事となった。

 ベテランであり、愛知県のオープンネットの顔的な方でもあった。工程管理の全てと見積り、申請作業をお願いすることになった。

 オープンネットのネットワークの醍醐味がここにもある。

 過去にも、京都の建築家と福岡の建築家のコラボレーション事例があった。

 工程管理についてのコラボレーション。建築家としては、あまりやる気が起きない業務でもある。しかし、松岡さんには、我々の仕事に興味を持っていただき、終始、誠実に御対応いただいた。将来的にCM業務の実力があがれば、CM業務のみの受注というケースも出てくるだろう。そんな予感がしたし、我々ももっと極めて行きたいという目標も見えてきた。

●遠隔地における監理

 2週間に1回のペースで我々は愛知に赴いた。と同時に、松岡さんからは逐一報告を受ける、そんな体制である。

 施主の交通費負担を最小限におさえるべく、愛知には深夜の高速バスを利用し、早朝から夕方までの実働時間を最大限とし、精力的に重点監理を心がけた。

 担当した最高執行責任者の伊藤憲吾は、長時間の高速バスの移動に耐え抜いた。健闘を讃えたい。

●エコキュート

 エコキュートは当初から導入大前提であった。最新型のモニター利用という枠組みが成立しており、今後、データ収集など、公私共に活用していただく事になる。

●施主支給品

 いくつかの建材をオークションサイトなどで、施主自ら購入した。施主支給品として納入していただく。

 このような動きもめずらしくなくなっており、今後、住宅1件分の資材を施主支給品とするケースもでてくるのかもしれない。
 
CUBE+TUBE#02 インテリア2・3

●グッドデザイン賞ノミネート

 「キューブ+チューブ」シリーズ、2006年度のグッドデザイン賞にノミネートされた。あいにく、受賞は逃したが、ある一定基準の品質を確保できている事が立証されたといっていい。

●価格の見えるグッドデザイン

 遠隔地におけるオープンシステムのコラボレーション。

 今回のテーマはそこにあったといっていい。
 単独の事務所ではなしえない出来事である。

 オープンネットというネットワーク。このネットワークにおいては、日々、全国の気鋭建築家がピュアCM手法の研鑽を行っている。メーリングリストにおいては、会員相互の無償のアドバイスが飛び交っている。

 同じ志を持つ同志であり、信頼関係は厚い。

 また、CPD研修会などで継続的な能力向上につとめているネットワークでもある。個々の会員さんの持つ独自のノウハウの惜しみない公開により、オープンシステムという手法は確実に進化しているといってい。

 全員が先生であり生徒である。そのような関係性が構築されてきている。1つの設計事務所の力などたかがしれている。しかし、全国200数十社の力がひとつになったとき、オープンネット代表の山中氏が唱える「建築革命」は実現していくのだろう。

 そのなかで、会員各自の役割はそれぞれに重要な価値を持っている。我々は「オープンシステムとデザイン」についての偏見を払拭する事が出来つつあるのではないかと自負している。
 
 
●データ
■#023 ECO−CUBE+TUBE#02
所在地/愛知県刈谷市高倉町
主用用途/専用住宅
■設計
設計/株式会社アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
監理/鰹シ岡設計事務所
■施工
CM/鰹シ岡設計事務所
基礎工事/木下組
地盤改良/(株)本陣
屋根・外壁工事/(有)山田板金工業所
金属建具、住設/(有)丸一アルミ工業
塗装工事/(株)キタムラ塗装
白蟻工事/中部白蟻研究所
仮設工事/佐野建築
木 工事/佐野建築
電気工事/(有)大桂
水道工事/(有)CAC
木製建具/藤井ハウス(株)
内装工事/(有)インテリアオーク
左官工事/(有)三輪左官工業
外構工事/佐藤ブロック
■構造・工法
構造/在来木造
特殊基礎/柱状地盤改良
基礎/ベタ基礎
■規模
階数/地上2階
最高の高さ/6.20m
敷地面積/167.0u(50.52坪)
建築面積/74.24u(22.45坪)
(建蔽率44.46%<60%)
延床面積/96.07u(29.06坪)
(容積率57.53%<150%)
1階/69.57u(21.04坪)
2階/26.50u(8.02坪)
施工床面積/114.27u(34.56坪)
■工程
設計期間
工事期間/2006年8月〜2006年11月
■敷地条件
用途地域/第1種中高層住居専用地域
防火地域/法22条指定地域
道路幅員/6m
■外部仕上
屋根/ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
外壁/カラーガルバリウム鋼板大波横貼
開口部/断熱樹脂サッシ(ペアガラス)
外構/砂利敷き
■内部仕上
1階
床/サクラ無垢フローリングt=15
壁/石膏ボードt=12.5+珪藻土クロス貼
天井/石膏ボードt=9.5+珪藻土クロス貼
2階
床/構造用合板表し仕上げ
壁/石膏ボードt=12.5+珪藻土クロス貼
天井/石膏ボードt=9.5+珪藻土クロス貼
■設備システム
空調 冷暖房方式/エアコン
給排水 給水方式/上水道直結
    排水方式/公共下水
    給湯方式/エコキュート
■主な仕様機器
衛生機器/INAX
U.B./INAX
厨房機器/INAX
照明/小泉
■コスト
建築本体工事費 1800万円台
坪単価 52万円/坪(建築本体工事/施工床)

●受賞・ノミネート
グッドデザインアワード2006「ノミネート」(CUBE+TUBE)

 
 
DATA
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古後 信二(37歳)
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
 代表取締役・最高経営責任者
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■プロフィール
1969年  大分県玖珠町生まれ。
1992年  大分大学工学部建設工学科 卒業。
1994年  大分大学大学院 修了。(佐藤誠治建築・都市計画ゼミ)
1998年  アトリエ・ラッツ 設立。
1999年  オープンシステムネットワーク会議 会員
2004年  四日市門前町まちづくり協議会顧問 就任。
2005年  有限会社アトリエ・ラッツ代表取締役 就任。
2006年  大分大学大学院非常勤講師 就任。
      日本建築家協会九州支部 幹事就任。
      株式会社アトリエ・ラッツ代表取締役
      最高経営責任者 就任。
      日本コンストラクションマネジメント協会 九州支部幹事就任
      オープンネットCPD研修委員
      日本建築家協会UIA東京大会実行委員
      がんばれ大分社会貢献ファンド・大分地区地域活性化協働推進会議委員

所属:(社)日本建築家協会、(社)日本建築学会、
    (社)日本商環境設計家協会、日本CM協会
    オープンシステムネットワーク会議
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■連絡先
(株)アトリエ・ラッツ一級建築士事務所
大分県大分市上宗方1996番地の1 K-SOHO 101

TEL:097-542-7430
FAX:097-542-7430
E-mail:rats@oct-net.ne.jp
URL:http://www.open-net.jp/site/page/jimusho/japan/kyusyu/ooita/rats/
 
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