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続 建築革命宣言!『思いを形にする』―くらしの工房での住宅設計への取り組みB
  「CCI」 2007年10月号 施主や業者に対しても理解してもらえない図面には意味がない。 「図面は言葉」――それが図面を描くときの基本姿勢。/くらしの工房 田中 清 氏

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『続 建築革命宣言!』
 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜


『思いを形にする』
―くらしの工房での住宅設計への取り組みB


施主や業者に対しても理解してもらえない図面には意味がない。 
「図面は言葉」――それが図面を描くときの基本姿勢。





寄稿
くらしの工房
田中 清 氏


●オープンシステムでの設計実務



オープンシステムによる分離発注の場合、どの業種でどれだけ分離して発注していくかは、プロジェクトの規模や、各々の設計者の裁量にゆだねられています。

また、設計図面についても、設計者により枚数や精度が違うという声を、工事に携わる専門工事会社から聞きます。

この点については、オープンシステムを導入している設計事務所同士の連携や、オープンネット(株)による研修などにより、解決していく必要があるものと考えるのですが、今回は、くらしの工房での設計実務を、実際の図面も交えてご紹介していこうと思います。

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●どこまで分離するか



発注先をできるだけ細分化し、競争原理を働かせることで、建設価格をおさえることが可能になるのですが、一方、材料の過不足などのリスクが直接施主にかかることや、職人の作業にあわせてタイミングよく現場納品するための発注責任が設計者にかかるので、闇雲に分離発注することの危険性も認識する必要があると思います。

私どもでも、過去に木造構造材とプレカット製材を分離発注したことが原因で、設計者の手拾いの木取りと、プレカットシステムのコンピューターが算出指示した木取りが微妙に違って、大変苦労した経験があります。

そういった試行錯誤がありながらも、工事実績を重ねる毎に、分離発注先が細分化されてきており、現時点では通常の新築住宅の場合、表のような分離発注をしており、基礎や大工工事などの数百万円単位の発注先から、数千円レベルの金物の購入先まで含めると、30〜40社に対して発注していることになります。

発注先を細分化することは、設計者の手間隙が増えることになるのですが、価格の透明化につながり、結果的に建設価格をおさえていることになります。

●図面も細分化



工務店による一括請負いの場合は、我々設計者が描いた図面から、工務店の担当者が設計意図を読み込み、施工図にして下請けの専門工事会社へ工事発注するのですが、工務店が介在しないオープンシステムの場合は、設計者が描く図面が、専門工事会社へ直接わたり、その図面により工事金額の算出や、現場での施工がなされます。

これは図面精度の高さを要求されるばかりではなく、各専門工事会社に設計意図が伝わる図面の描き方が強く要求されるものです。

例えば図1の建具枠廻りの詳細図においてここまで描くと、大工職が枠材をどのように納め、建具職が建具納まりを検討し、また内装職がクロスをどこまで貼るかという情報がわかってもらえます。

枠材の発注を大工工事に含める場合は、見積をする大工が他の図面と照らしあわしながら、数量を拾い出ししていくことになるのですが、この枠材を分離発注するには、製材所に対して伝わる図面が必要になります。


写真図2の造作材リストでは、その枠材の長さ、化粧プレーナーの範囲、数量などの情報を伝えており、この図面があればどこの製材所であっても、枠材の正確な見積金額の算出が可能です。

また、図3においては、大工職につくってもらう現場製作家具の材料になる、積層パネル(長さ4,200ミリ、巾500ミリ、厚み36ミリ)を分離発注し大工職に対し支給するために、定尺のパネルをどのように分割するのが、最も効率的なのかを示した図面です。

このように、発注先がストレス無く設計者の意図を読み込める図面を提供することで、同一条件で横並びの見積書が提出されることになり、過不足無い状況で最安値の業者から材料を購入できることになります。

くらしの工房ではその他、フローリング材、外部デッキ材等の仕上げ材、特殊な左官材料、棚受けレール等の金物類などは、我々設計者が数量を拾い出し、施主より販売会社から直接買い付けてもらうことで、コストダウンを図っています。




●図面は言葉



彫刻家のように自らの手で立体をつくることが出来ない建築の設計者は、自らの設計意図を図面にして製作者に伝えることになります。

かつて先輩から『施主に対しても、業者に対しても理解してもらえない図面には意味が無い。図面は言葉や!』と教えていただいたことが、今でも図面を描くときの基本姿勢です。

写真手書き図面の時代は、設計者が重要視している部分は、何度も鉛筆でなぞるので、自然とその部分が強調された図面になり、それにより図面の読み手は設計者の意図を汲むことが出来たり、設計者の力量を測ることができました。

コンピューターのキャドによる作図で、図面の情報がデジタル化された今でも、描かれた線の太さ、寸法の入れ方、文字の表記の仕方などは、若い設計者に対して口やかましく指導するところです。



また建築の設計図は、意匠図、構造図、設備図に大きく分けられ、作成する担当者も違うことが多いのですが、このことが各図面間の整合性が取れていないという一因にもなっていたりします。

くらしの工房では、図4のように意匠図面の中にも、コンセント、照明器具等の設備情報を描き込むことで整合性をはかり、各業者間の調整にもつなげています。。

●リスクの回避


優秀な工務店に対する一括発注を前提とした設計図書の作成では、設計者は図面を描きすぎず、自分が重要視するディテール、デザインを工務店に伝えることが肝要で、図面を描きすぎると工務店の裁量権が少なくなり、工事金額が増加するという事実もあります。これは工務店が不慣れな材料、工法に対するリスクを工事予算金額として確保し、リスク回避しようとすることに起因しています。

一方、専門工事会社へ分離発注するオープンシステムでは、価格の透明性が増すことで、リスクを工事予算金額で回避することが難しくなります。リスク回避するには、従来の工務店一括発注の考え方に近い、ある程度発注先をまとめることでリスク調整費を確保するか、それとも、設計者が材料、工法、流通の各分野に精通し、リスクそのものを減少させるか、この二通りの選択肢しかないものと考えます。

工事に対するリスクが減ったとき、専門工事会社も工事参加がしやすくなり、本来の職能を発揮することに集中することで、より良い建物ができるのだと思います。



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