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続 建築革命宣言!『思いを形にする』―くらしの工房での住宅設計への取り組みA
  「CCI」 2007年9月号 創る心と住む心。家造りに関わる一人ひとりが「心をオープン」にした時“魂の宿る家”が完成する。/くらしの工房 田中 清 氏

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『続 建築革命宣言!』
 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜


『思いを形にする』
―くらしの工房での住宅設計への取り組みA


創る心と住む心。
家造りに関わる一人ひとりが「心をオープン」にした時“魂の宿る家”が完成する





寄稿
くらしの工房
田中 清 氏


●職人としての誇り



戦争や天変地異、そして社会情勢の変化があるごとに、一時期に大量の住宅供給が必要になり、それまでの村落共同体での家づくりでは賄えなくなり、家づくりを一括請負いする工務店や住宅メーカーの出現にいたりました。
日本においては、第二次世界大戦後に大工が工務店へ、高度成長時代にハウスメーカーという存在が生まれ、当時の住宅需要に答えることになります。

江戸時代の士農工商という身分制度に当てはめると、大工はまさしく『工』であるが、その大工が工務店を起こすと『商』になり、技能者から営業者に立ち位置が変わることは、大変興味深いことだと思います。
小学生に対する将来なりたい職業のアンケートでは、『大工さん』という回答が上位を占めると聞きますし、実際オープンシステムで活躍する職人さんを見ていても、僕自身、素敵な職業だと思います。

ただ、職人になる優秀な人材が不足していることも事実です。
ドイツのマイスター制度のように、一定の技量をもった職人の地位を、国の社会制度の中で保護していくような仕組みが出来ないものかと、オープンシステムを始めてから強く思うようになっています。

オープンシステムは、建て主が中心となって、設計事務所と共に進める分離発注方式であるので、建て主と設計士の相性も重要ですが、工事が始まってからは、作り手である職人の存在も大変重要なものとなります。

そして職人にとっても、従来の下請けとしての工事参加ではなく、元請として参加することに意義とやりがいを感じてくれる場になれば、これから職業を選択する若者達が、職人として生きる人生の選択肢が特殊なものではなく、例えば大学院を出た若者が職人の道へ進むというような環境に出来るのではないでしょうか。

今回は、くらしの工房でよくお世話になっている大工の井上さんに登場していただき、職人側から見たオープンシステムについて、語っていただこうと思います。

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◎今に至る経緯



井上:小学生くらいの頃より現場が遊び場だった私は、中学を卒業後大学進学を断念し、工業高校建築科へ、卒業時有力企業への就職の道もありましたが、家業の大工を継ぐことになりました。高校進学は当時大工には必要ないとの声もありましたが、各方面で活躍する友人ができた事は、心強いばかりです。

仕事を手伝いにいっていましたので、すんなりと、父に弟子入りし、簡単な仕事はできるようになっていました。

私の父も血筋をひく人を師匠にもち私で四代目になります。師匠(父)は様々な大工仕事を手掛け、社寺建築から一般建築まで、木造・鉄骨に関わらず大工工事を請けていましたので、今ではそこで積んだ経験が私の原動力となっています。

時代が経過し、今では立場が逆転し私が経営者となっていますが、父(師匠)は現在でも私と共に現役で働いており、在職年数は、おそらく日本一じゃないかと思います。「仕事は盗め」というのが教訓でしたが、自分で学んで身につけるという父の姿勢は間違いではなかったと思います。

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◎オープンシステムの工事に参加しようと思った理由、そのきっかけ



井上:高度経済成長も終盤となり、徐々に各出入り建築会社の仕事の受注量も減る傾向にありました。年間の仕事量は当時変わりなくありましたが、2、3年後を心配していたおり、材木屋さんより、設計事務所からの問い合わせがあるとの知らせがあり、行って見る事にしました。

そこでオープンシステムの内容の説明を受け、私でも可能であることを認識し、とりあえず業者バンクに登録させていただくことになりました。私自身こういう縁というかきっかけは、非常に大事にするたちで“一期一会”という言葉がありますが、後で後悔しないためにも出会いを前向きに取り組んで行きたいです。

数日が経過し、メールの知らせに工事の見積もり参加の報告があり、まずは身近な設計事務所数社に訪問させていただきました。そこで最初に感心したのはどの設計事務所の所長さんも建築に対して非常に真面目で熱心であるということ。それはオープンシステムでなくてもそうかもしれませんが(笑)。

今まで職人と設計士が机で建築について正面から話し合う事自体がなかったから新鮮に感じました。そのこともありオープンシステムの工事に参加しようと思いました。





◎オープンシステムと従来の工事現場で違うことはありますか?



井上:まず一番違うのが、現場ごとに業者が変わる事だと思います。商品の購入業者などはそう関係してきませんが、施工業者が変わると一定品質を確保するためには、設計監理の強化が必要になってくるように思います。

私自身の従来の現場は、それ以外はあまり変わりありませんでしたので、すんなりオープンシステムの現場に溶け込むことができました。

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◎オープンシステムのメリット・デメリット



井上:設計事務所の仕事を、工務店、建築会社が請け負った場合で考えると中間に監督等の人が入らない分直接に設計士と話ができるので仕事も順調に進み、また設計士が現場に通うことで、おさまり等の検討を即座に対応できるので合理的に工事を進めることができます。お施主様に対しては私達の気持ちが直接に伝わるので感謝された時は、やりがいを感じます。
 
デメリットをいうと、仕事の入る時期に関して、少し調整が必要な場合があります。建築会社・工務店などでは、入る時期までの仕事を調整してくれますが、私の場合は、自分自身で元請け仕事を確保しておかなくてはなりません。元請けだから仕方がありませんね。
 
仕事に対する責任が増しますが、それがまたやりがいでもあります。






◎オープンシステムの現場で常に心がけていること



井上:どの様な仕事・現場でも同じだと思いますが、「チームワーク」が一番大事です。オープンシステムでは業者同士が初対面の事もあります。

またお施主様もプロジェクトメンバーの一員だということを認識していただくことで一つの家を作り上げる達成感を全てのメンバーに共有してもらうべく設計士さんと共に努力しています。

私の場合、私自身が職人でありますので、現場では自分から率先してあらゆる業者やお施主様と会話などコミュニケーションをするように心がけています。会話をすることによって、お互いの情報交換もできるし、いい雰囲気の現場を構築できます。

それによって、お互いの作業が円滑に進み、よりよい建物造りができると思います。

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◎大工という職種の将来像について思うところは



井上:現在大工をしていてやりがいを感じて仕事をしている人はどれ程いるのだろうか…。大工職の高齢化も進み多数の引退する大工が出てきています。社会情勢の将来を考えて見て、建築工事の減少も考えられますが、それと同時に職人の絶対数も、確実にへっていきます。

私は、若い世代の人達にもやりがいのある仕事をみつけてあげ、経験を積ませてあげたいと思います。私には、三人の息子達がいます。その息子達に対する私からのプレゼントにするためにも、オープンシステムをはじめ、様々な困難な仕事にも取り組んでいこうと思います。



◎オープンシステムがどうなって欲しいと思いますか


井上:オープンシステムとは、なんなのかと考えた時「建て主が中心となって設計事務所と共に進める分離発注方式」と定義してありますが、「価格がオープン」「仕事がオープン」「心がオープン」など…。といろいろなとらえられ方があります。

古くから日本人の心の中に、阿吽の呼吸という言葉がありますが、何事に対しても「心がオープン」だからこそ阿吽の呼吸がなりたつように思います。家を造るってそういうことじゃないかと思います。

建築士一人では建ちません。また、大工だけでも家は建ちません。家造りプロジェクトのメンバー一人ひとりが心を通わせた時に「魂の宿る家」は完成します。そう思いたい。最近の住宅メーカーや建築会社には、それは感じない。ただ会社運営のためだけに仕事する、職人達もやりがいなくただ仕事をこなすだけ、そんな状況の中でいい建物が出来るわけがありません。

創る心と住む心「心が通う家造り」って素敵ですよね。そうありたい。これからもずっと。

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