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続 建築革命宣言!『思いを形にする』―くらしの工房での住宅設計への取り組みE
  「CCI」 2008年1月号 自分がやりたいこと、社会に対しての自分の使命が見えた時、それを自分のものにするには絶えず工夫が必要だ。 /くらしの工房 田中 清 氏

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『続 建築革命宣言!』
 〜オープンシステム/ピュアCMに挑む建築士たち〜


『思いを形にする』
―くらしの工房での住宅設計への取り組みE


自分がやりたいこと、社会に対しての自分の使命が見えた時、
それを自分のものにするには絶えず工夫が必要だ。





寄稿
くらしの工房
田中 清 氏


●利益追求の歪



半年のあいだ続けてきたこの連載も、今回で最終回となります。この間、耐震偽装事件に端を発する構造疑惑問題に対処するための、建築基準法の改正。そしてこのことが、建築確認申請業務に対する大混乱をきたし、経済問題にまで発展しています。また、建築以外の分野においても、『偽装』という言葉が世間を騒がせています。

なぜ偽装が行われるのか?を考えると、建築での耐震偽装という行為においては、分譲マンションの販売原価を引下げ、販売利益を上げることができる。食品分野においては、消費者に植えつけられたブランド食材イメージを利用して、原材料を偽装し商品を高く販売する。あるいは、消費期限を偽装して返品をなくし、商品を売り切るなど、企業の利益追求の姿勢が歪をもたらしているのは明白です。

『偽装』という利益追求の副産物とも呼べる歪をなくす為に、一流と呼ばれる企業においては、社内コンプライアンスの徹底や、価格競争からの脱却を図るため、製品品質による市場経済での差別化が行われています。

建築の世界でも、大手住宅メーカーや、大手ゼネコンではこれらの取り組みに力を入れていると聞くところではあるのですが、建築というものが商品性能として他社との差別化がしにくいことや、いつまでも無くならない談合による受注体質を考えると、上手く機能しているとは言えないと思います。

また他の製造業と根本的に違うのが、建築が現場での一品生産物であること、それらを実際に作り上げる職人が企業の社員ではなく、企業と職人の間にも、利益追求の歪が生まれる環境であるということです。

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●偽装は防げるか?



先の耐震偽装事件が、建築士という国家資格を持った者が行った犯罪として、その再犯を防ぐために建築基準法や建築士法の改正、建築士試験制度の見直しが検討されており、建築士の資質の向上と、チェック体制の強化が目指されています。

ただ、高度化した建築システムへの対応、犯罪行為を認識し意図的に偽装しようとするものを見抜くことは、非常に困難だと思います。

経済活動の一環として行われる建築の世界での『偽装』を防ぐためには、全ての現場にて独立専任の工事監理者という存在をおき、工事着工から竣工まで工事監理者が責任をもって、チェック機能を果たすことが、一番効果があることです。

実はこのことは改正前の建築基準法にも定められたことにもかかわらず、工事監理者である建築士の独立性まで問われないことから、工事施工者から報酬を得る建築士であったり、建築確認申請業務のみを受ける外注先の建築士であることが、工事監理者の機能を発揮しない原因につながっているといえます。

このことから、建築プロジェクトに携わる工事監理者としての建築士の立ち位置を、利益追求の渦に囚われない、第三者の立場として確立することが、今のところ最も有効な手立てだと思うのですが…。

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●若い設計者へのエール



僕が子供の頃、人気のTVドラマで、『どてらい男(やつ)』という番組がありました。大阪立売堀(いたちぼり)の機械器具商に丁稚から勤め上げた人物の一代記なのですが、今でも良く覚えている一話があります。

それは、終戦直後の駅で列車の切符を買い求め長蛇の列をなす人々に、アンパンを売ろうとする戦災孤児と主人公のモーやんの話しでした。列の人たちは、切符を手に入れるために何時間も並んでいるので、空腹なのは間違いないのですが、アンパンを食べると喉が渇き、水を飲むためには列を離れなければならないという理由で、アンパンはまったく売れません。

主人公のモーやんは、アンパン売りの男の子に、水筒に水を入れるサービスを付けて、アンパンを売ること進め、見事完売するというものでした。

オープンシステムを取り入れて6年。建築家にとってのオープンシステムは、アンパン売りの水入れサービスみたいなものだと、つくづく思います。自分がやりたいこと、社会に対しての自分の使命が見えた時、それを自分の職業として、成り立たせるには何か工夫が必要なのです。


建築家として将来独立することを夢見て、徹夜を厭わず設計課題やコンペに挑む学生や、安い給料で長時間の労働に耐えている若い設計事務所所員にとって、小さくとも自分の思い通りに仕事ができる機会が非常に少なくなっていると思います。

独立したは良いが、食べて行けずに結局は住宅メーカーや、工務店の下請け図面を描いて、その場しのぎに事務所を運営していく…。僕自身も経験があるのですが、独立直後に陥りやすいことです。

少なくとも、オープンシステムという手法を使えたなら、施主から直接の仕事を獲得するチャンスは、かなり増えてくる筈で、独立直前の若い設計者には、是非ともオープンシステムを知ってもらいたいと思います。

現在、オープンシステムに加入している設計事務所の数は205社(平成19年10月末現在)です。全国での専業の設計事務所の数と比して、この数は非常に少ないと言えますし、今現在、爆発的に会員数が増えているわけでもありません。

オープンシステムの一会員である僕にとっては、会員数の増減が直接、業務に左右することはないのですが、オープンシステムを一般的な建設手法として根付いたものとするには、会員数の増加はこれからも目指していく必要があるものと思います。

また建物規模が大きくなった時の対応を考えると、CM業務を設計者が兼業で行うのではなく、独立したCMRの存在が必要だと思います。この存在を工務店での実務経験者に求めるなど、今後のオープンシステムは、専業の設計者にだけではなく門戸を広げることが、その発展につながるのではないでしょうか。

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●今後の展開



独立後、僕一人だった事務所に、4人ものスタッフがやってきてくれて、事務所の存在が所長の独占物ではなく、所長の役目をさせてもらっているのだと思うようになりました。

代替わりしても、元気でありつづける組織にしたい。そして、若いスタッフにとっても、やりがいを感じられるような環境を作り上げることが、初代所長の僕の役目だと思います。



今後も戸建住宅の設計を中心に活動していくことになると考えているのですが、組織としての設計能力の向上を考えると、建物の用途、構造、規模など幅広い建築設計の経験を積み、そして住宅設計へフィードバックさせていくことが課題です。

そのような理由から今後の展開としては、次にあげるようなプロジェクトにも積極的にかかわり、組織に刺激を与えていきたいと考えています。

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◎他の設計者とのコラボレーション

高知県で活動する建築家による設計の、奈良県が建設地の専用住宅の新築工事で、くらしの工房がCM業務を担当し工事を遂行していく計画です。価値観の違う設計者とコラボレーションすることで、くらしの工房内に新しい刺激を与えることや、CMRとしての建築主や設計者とのコミュニケーションのとり方など、課題をクリアしながら現在工事が進められています。



◎企業建物への進出

現在は小規模なリフォーム計画が主ですが、工務店への設計を含めての一括発注が殆どだった分野に、専業の設計事務所が入ることで、事務所や工場建築においても機能性+快適性が満たされた建築を提供していきたいと考えています。

住宅設計で普通に使われる材料や機器を、オフィス空間に使うだけで安らぎ感のある空間ができたり、工場建築で用いられる技術や材料を住宅建築へ導入するなど、新しい試みをしていきたいと思います。



◎大型物件での採用

RC造8階建て集合住宅の計画。仮設計画や安全計画、分離発注先の取りまとめなど、戸建住宅ではあまり表面化しない課題がたくさんあるのですが、我々のCM業務力を向上させると期待しています。



最後に、この連載がいままでのこと、これからのことに対する考えを再認識する良い機会になりました。

このような機会を与えてくれた関係者の方々に、心より御礼を申し上げたいと思います。

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