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CCI 2009年2月号
  【第1回】この連載で明らかにしたいこと〜業務の内容は? 報酬料は? 顧客の満足度は?〜

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『CM分離発注の実践現場から』
 〜建築士へのレポート/各地の事例を徹底取材〜

【第1回】「この連載であきらかにしたいこと」
業務の内容は? 報酬料は? 顧客の満足度は?

取材・記事 山中省吾・武藤昌一・藤井旭

雑誌『イエヒト』編集部・特別取材班

■CM分離発注方式の、業務の内容は?
設計監理とCM業務は、約款上で明確に分けることはできるのか?

■CM分離発注方式の、業務の報酬料は?
費やす労力と責任の重さに比べて、十分な報酬は得られているのか?

■CM分離発注方式の、顧客の満足度は?
どこで知り、何に魅かれ、どう納得したのか。そして、具体的に得られた成果は?


業界からの風当たりは?

出張先のホテルで1通のEメールを受け取った。そこには、大要、次のように書いてあった。

CM分離発注のことをワールドビジネスサテライト(テレビ東京のニュース番組)で知った。建築情報誌の編集者として、大変興味を持った。是非取材したいと思っているが、出張続きでスケジュールが空かない様子。できることならEメールでの取材に応じてほしい。

そして数項目の質問。その中に、次のような質問もあった。

「建築業界からの風当たりは?」

今からちょうど10年前。1999年のことである。当時、注目すべき新たな建築手法として報道されたCM分離発注方式。建築情報誌の編集者には、どのように映ったのだろうか?

「業界からの風当たりは?」 この言葉が語るように、建築業界の触れてはいけないところ、つまり、地雷を踏んだ建築士と映ったのかもしれない。

編集者が抱いていた建築業界―――設計事務所と施工会社は持ちつ持たれつで、互いに補完し合う関係。野球で言えばバッテリーのようなもの―――こう考えていたとしてもけっして不思議ではない。

それまでは、元請業者の一括請負が当たり前。施主が直に多くの専門業者と請負契約を交わすことなど、考えられなかった。建築を生産方式の観点で捉えることも、専門工事業者の視点で考察することも無かったのである。

そのようなとき「これまでの関係を解消する」と言わんばかりの大胆な建築方式が、報道番組を通して編集者の目に飛び込んできた。これは大変なことだ。業界からの風当たりは、ずい分きついのではないだろうか?



建築情報誌『CCI』の連載



Eメールでの取材を申し出たのは、他ならぬこの建築情報誌『CCI』の編集者だった。数項目の質問にありのままの現状を説明し、その夜のうちに返信した。すると日を置かずして、大要、次のようなメールが届いた。

CM分離発注方式は、当編集部の認識を超えて奥が深いように感じた。業界を変える魅力もパワーも十分あると思った。単発の記事ではもったいないと上司から言われた。連載をお願いすることはできないだろうか。

こうしてCCI誌上で、2000年2号から連載が始まった。題して、「建築革命宣言!」。連載は10回続き、加筆して本になった。それが『価格の見える家づくり』である。

その後、CM分離発注を実践する建築士たちが、自らの体験を語る連載もあった。その時のタイトルは「続・建築革命宣言!」。

CM分離発注方式と建築情報誌CCIは、とても縁が深い。そしてまた縁あって、CM分離発注方式に関する3度目の連載に関わることになった。今度は取材・記事/『イエヒト』編集部、という新たな立場での関わりである。



『イエヒト』という建築雑誌



「こんなことまで公開していいの?」「建て主が知りたいことは、業者が知られたくないこと」 建築雑誌イエヒトのキャッチコピーである。このコピーが表すように、これまでの建築雑誌に比べ、自由で大胆な記事が売りの雑誌である。 イエヒトは、07年7月に創刊された年4回発行の季刊誌である。主にCM分離発注方式の建物について解説している。

既存の出版社が新しい雑誌を創刊したのではない。新しい切り口の雑誌を出すために、出版について何の経験もない建築士を中心に雑誌コードを取得し、そして創刊した。思いはひとつ。広告クライアントの顔色ばかりを伺い、読者の要望に応えようとしない雑誌が氾濫している。雑誌不況。こういう時代だからこそ、価値ある雑誌が必要だ。

イエヒトの編集部は、バカがつくくらいの正直さで取材に当たっている。秋田・長野・富山・福岡・沖縄……。全国各地。霞が関にも行った。ライターの協力を仰ぐときもある。その場合は、必ずイエヒトの編集スタッフ―――CM分離発注の実務経験のある建築士が同行する。何故なら業者の発表を鵜呑みにする過ちを恐れるからである。

取材の際は、可能な限り業務の記録を検証する。契約書・打合せ議事録・見積もり比較・監理記録など。事実を正確に伝えるためである。

毎号、ひとつの事例で2万字を超える記事がある。専門知識を駆使し、深く掘り下げて描く。このような記事は、イエヒト編集部が直に取材し執筆している。既存の建築雑誌のライターでは手に負えない。

イエヒトは、建築の専門知識を持たない一般の人にも分かるよう易しく噛み砕いた記事に努めている。専門性の高く難しい部分は敢えて載せていない。読者の分からないことを書いても意味がない、という方針だ。その難しい部分を、建築士向けの情報誌CCIで明らかにする。それがこの連載の目的なのである。建築士なら理解できるだろうし、そして必要な知識でもあると思うからである。



CM分離発注方式の10年を振り返る



踏んではいけない地雷を踏んでしまったと思い、建築業界からの風当たりを心配したCCIの編集者。実際はどうだったのか? ここでCM分離発注方式の10年を振り返ってみるのも無駄ではないと思う。

結論を先に言う。地雷は、不発弾だった。そして、風も吹かなかった。いや、風は吹いたが、逆風ではなく、むしろ追い風が吹いた。

CCIの連載に加筆し、01年2月にコスモ・リバティー社から出版した書籍『価格の見える家づくり』は、紀伊国屋書店・三省堂・八重洲ブックセンターなどの有名書店で、瞬間的ではあるが、一般書籍の部で週刊ベストテンに入るほど売れた。

そしてその年の10月、NHKの人気番組『クローズアップ現代』で、「建てたい家をより安く」と題して建築士によるCM分離発注方式の取り組みが紹介された。

翌02年には、国交省『国土政策研究第10号』の「情報化社会の進展と建設産業のあり方に関する研究」で、CM分離発注方式の代表的な事例としてオープンシステムの取り組みが紹介された。

こうして、CM分離発注方式に取り組む建築士が増え、事例もしだいに増えた。現在イエヒトの編集部では、約3000件のCM分離発注方式の事例を把握している。



この連載で明らかにしたいこと



CM分離発注方式の、業務の内容は? 実際に設計監理業務とCM業務を契約約款で明確に分けることはできるのか?

業務の報酬料は? 費やす労力と責任の重さに比べて、十分な報酬は得られているのか?

顧客の満足度は? どこで知り、何に魅かれ、どう納得したのか。そして、具体的にどのような成果が得られたのか?

このようなことを、イエヒト編集部・特別取材班が、これまでの膨大な取材資料をもとに、具体例を示しながら明らかにする。

CM分離発注方式は、予め確立されたマニュアルに沿って広まったのではない。経験者の事例を参考に実践した建築士たちが、次は自らの事例を持ち寄り、互いに比較検討しながら構築してきた。

長い時間を費やして、契約書と約款、業務の手順と必要な書式、リスクの分析と補償などを構築してきた。正確に言うなら、CM分離発注方式は、今も構築途上の建築生産手法なのである。

約10年前、CCIで明らかにされた連載は、主に一建築士個人の体験であり事例だった。これから始まる連載は、全国各地の豊富な事例を比較検討するところに大きな意味がある。

建築士の実務にCM分離発注方式を取り入れることは可能か、業務のスキルをどう維持するか、といった実践的なことに何らかの示唆を与えることができたなら、執筆陣として望外の喜びである。



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掲載者 イエヒト編集室
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