オープンシステム関連情報
各種メディアへの掲載、建物の受賞等、オープンシステムに関する情報です。
 

イエヒトVOL.6 講座4
  改革は誰のため? 国交省を取材―欠陥住宅は救われるか

イエヒト6号/家づくり講座4


改革は誰のため?
国交省を取材―欠陥住宅は救われるか



『イエヒト』編集長 一級建築士 山中省吾




今号もすぐに役立つ話ではない。
しかし、問題の本質をあれこれ考えるのは、おもしろい。


前号のおさらい
国土交通省を取材


建築業界では、かつてないほどの大改革が進んだ。業界からも国民からも大きな反対はなく、淡々と進んだ。
そこで、国土交通省を取材した。

「改革は誰のため?」
改革の内容を伝えることも大事だが、改革の趣旨を伝えることも同じように大事だと思った。
一連の法改正の背景には、国交省の強い決意があった。

耐震偽装事件は二度と起こさない。
これからは欠陥住宅の取得者を救う。

そして、具体的な改革に着手した。
確認検査の強化、構造計算書の二重チェック、構造建築士・設備建築士の創設、瑕疵担保を確実に履行するための供託金や保険制度の導入である。

「住宅取得者を守るため」という国交省の強い意志表示に、業界はあえて反発しなかった。
どのように改正されても反論できる立場ではない、ということなのかもしれない。

いずれにしても、改革の発端となった「耐震偽装事件」は、建築業界によほど強い衝撃を与えたのは間違いない。
「耐震偽装事件」を発端に行なわれた一連の法改正であるが、一つだけ性質の違うものがあった。それは「長期優良住宅促進法」である。

いわゆる「200年住宅」。
これまで日本の住宅は、先進諸国に比べ、あまりにも寿命が短かった。それでは、住宅ローンを払うために働いているようなもの。

これからは、住宅の資産価値を形成するため、また、豊かな生活をエンジョイするために、住宅を長く使おう! という背景から生まれた。
さて、「住宅取得者を守るため」に、入口=確認審査を強化し、そして出口=完成後の瑕疵保証も強化したのであるが……。

では、中身=品質に直結する監理はどうなのか?
というところで前号は終わり、国交省の取材も仕切り直した。


監理は建物の品質を
確保する大切な作業


再び国交省を取材した。
今度は「監理」中心の取材である。「管理」ではなく「監理」。
「健康管理」や「管理職」の「管理」はよく使われるが、「監理」は馴染みがない。

「監理」を載せていない国語辞典も多い。「監理」は、建築の業務を示す特殊な用語である。
おそらく、建築基準法や建築士法を定めるとき、新しい概念や業務を盛り込むために、苦心して捻りだした新語だろうと思われる。

「監理」とは、設計図面の通りに工事が行なわれたか、照合する作業である。小難しい理屈を抜きに具体例で説明すると、次のようなことである。

さて、明日はコンクリート打ち。
今日は「鉄筋をチェック」しなければならない。と、監理者。

・種類は? OK。
・直径は? OK。
・間隔は? OK。
・つなぎかたは? OK。
・型枠との空きは NG。
おっと、NGはマズイ。施工業者に注意しよう。
もし直さなければ? その時は建築主に報告しなければならない。(建築士法)

チェックした内容は、工事完了後、建築主に書面で報告する義務がある。
後で誰でも確認できるよう整理しておかなければならない。(建築法)

例は、住宅の監理の一部で、基礎鉄筋に関する項目である。
これ以外に、監理すべき項目は、何十項目もある。

このようなことが、建築基準法や建築士法で定められた「監理」である。
監理は、建物の品質を確保する上で欠くことのできない重要な業務である。


監理の実態は
「わからない」


その重要な「監理」を、今回の大改正では、何も手をつけていない。
「監理」は、改正の余地がないほど適正に行なわれているのか?

単刀直入に質問した。返ってきたのは意外な言葉だった。
「わからない」と。

これまで国交省として、監理の実態を調査したことがない。だから、わからない。
……というのである。

な、なんで? 監理は適切に行なわれている、と断言されると思っていたが、予想外な返答。
だが、その理由を聞いて納得した。

建築物を建てる際の確認申請は、建築主の行為である。
確かにそうだ。申請者の欄に、建築主の氏名を記入する。

しかし、建築主自身が確認申請書に必要事項を記入し、書類や設計図面を綴るには無理がある。
また、構造計算書や設計図面、さらに監理や施工を、建築主自身で行なうのも無理である。

したがって、申請や設計・監理を建築士に委託し、施工を業者に請負わせることになる。(確認申請書には、申請者、代理人、設計者、
監理者、施工者の氏名を記入するようになっている)

法的には、設計も監理も施工も、建築主の行為である。
どのようなレベルの設計や監理をさせるか、それを選択するのも建築主の裁量である。
したがって、国交省はそこまで介入しない。だから、監理の実態はわからない、というのである。


監理のレベルは
建築主の裁量で決める


なるほど、納得である。確かに建築基準法や建築士法には「建築主は工事監理者を置かなければならない」と書いてある。建築主の主体的な行為だ。
厳密な監理で品質を重視するのも、簡易な監理で費用を浮かすのも、建築主の裁量なのである。

で、住宅ではどの程度の監理が行なわれているのか? 実際はどうなのか? 
自分たち国交省の職員より、記者(私)のほうが詳しいだろうから教えてほしいと言うのだ。

なんと率直な。今回の取材相手は、形式張ったことが嫌いらしい。
それで私も、ざっくばらんに、日頃の思いを話した。

私は、ずっと設計事務所で仕事をしてきた。公共も民間も、そしてある程度大きな建物も小さな住宅も手掛けてきた。
特にこの十数年間は、住宅の小規模建物を中心に分離発注を試み、業務の進め方や書式を整備し、設計事務所が共通で取り組める現実的な手法して定着させた。

また、全国各地の設計事務所と情報を交換し、監理についての実態も把握している。
そういう前提で、私の考えを話した。


ほとんどの住宅で
監理は行なわれていない


公共工事では、かなり真面目に監理は行なわれている。民間でもある程度大きな建物は、それなりに監理は行なわれている。
しかしほとんどの住宅で、監理は行なわれていない。

読者の中で、これまでに住宅を建築した人がいたら、そのときのことを思い出してほしい。
完成時に、「監理報告書」を受け取っただろうか? 

ほとんど、いないはずだ。工事の記録写真を受け取った人はいるかもしれない。
しかしそれは、監理報告書ではなく、記念品である。

監理報告書が提出されるのは、ごく一部の住宅だけである。それは、設計事務所に設計監理を委託した場合である。

設計事務所は、建築基準法や建築士法を遵守するという理由もあるが、建築主にいい建物を引き渡たそうと、誠実に監理している。
しかし、断言してもいい。どんなに大きなハウスメーカーであれ、町の工務店であれ、きちんとした監理を行ない、建築主に報告書を提出しているところは、ほとんどない。これが現実である。

なぜか? 監理は人の手がかかる。しかも、定められた建築士でなければ行なうことができない。
要するに、金がかかるからだ。


監理を行なわなくても
違法ではないのか


ほとんどの住宅で、監理が行なわれていないのは事実である。では、現状の多くは法律違反か? 

そこが微妙である。建築基準法や建築士法では、監理すべき建物を定めているが、監理の具体的な方法を示していない。
したがって、次のような監理報告書でも、違法とは言えない。

 @設計の変更はなし。
A主要な材料や設備は設計図書の通りである。
B主要な工事は設計図書の通りに施工してあった。
C施工者に与えた注意は特になし。

しかしこれでは、監理とは言えない。違法ではないかもしれないが、建物の品質を確保する、という目的は果たせない。
住宅といえども、厳密な監理を行なえば、ファイルブック数冊分の記録が残るのがふつうだ。

では、監理の趣旨から大きく逸脱している業者を、国交省はなぜ放置しているのか?
その理由は既に述べた。どのような方法でどこまで監理するかは、建築主と監理者間で決めることである。

つまり、現状の監理をよしとして監理者を選択したのは、他ならぬ建築主自身である。
だから、とやかく言うべきことではないのだ。


建築主が知りたい情報は
業者が知られたくない情報


法律上は、建築主自身が、設計者を選択し監理者を選択している。
しかし、監理の意味を理解している建築主は少ない。
それどころか、ほとんどの建築主は監理という言葉すら知らないし、監理者と現場監督の違いもわからない。

もし建築主が監理の意味をちゃんと理解し、そして分の家の監理がまったく行なわれていない事実を知れば、どうするだろう。
「高い金額で契約したのだから、勘弁してよ」と、言うだろう。

さて、読者は既にお気づきだと思うが、「賢くないと、いい家はつくれない」のである。
と同時に、疑問も湧いたと思う。建築主が賢くなる大事な情報を、一体どこで取得すればいいのだろうかと。

そう、現実は皮肉なものだ。
建築主にとって知りたい情報は業者にとって知られたくない情報なのである。
業者はあえて教えてくれないし、住宅雑誌も広告主の顔色を伺って、あえて触れない。

監理者を置いたのは、他ならぬ建築主自身であるが、建築主に大事な情報が届いていないのも事実である。

この点は、取材に応じてくれた国交省の人とも、個人的な見解として一致した。
国交省も、そして私たち住宅雑誌を発行する者も、もっと積極的に大事な情報を発信しなければならないのだ!

本誌162ページ『すべての住宅で工事監理を徹底させるキャンペーン』は、この取材中に思いついたのである。嘘だろう?
いいえ、本当である。


すべての住宅の監理を
徹底させたら、大パニック?


私たちの取材に応じてくれた国交省建築指導課の人は、とてもフランクな感じだった。
現状は現状として認めた上で、互いに胸襟を開き、意見を交換することもできた。

国交省の人たちも、住宅等の小規模建物では、監理があまり厳密に行なわれていないだろうと感じていたようだ。

では、現実問題として、いきなりすべての住宅の監理を徹底させたらどうなるか?
おそらく、大混乱するであろう。

昨年6月、建築確認の申請手続きを厳格に運用した。
すると、予想を遙かに超えて、大混乱を引き起こした。
運用直後、住宅の着工数が対前年度比で約40%も激減したのである。

それまでも、かなり厳格だった申請手続きを、更に厳格に運用しただけで、予期せぬ大混乱である。
では、これまでまったくといっていいほど為されていなかった住宅の監理を、いきなり徹底させたら……
建築確認の混乱の比ではないだろうことは、容易に想像できる。

かといって、監理を行なわなくても、住宅の品質は大丈夫なのかといえば、それは賭けのようなものだ。
現に、欠陥住宅は後を絶たないからである。

では、どのようにして、監理を徹底させるのか? 
それは、建築主のあなた自身が賢くなる以外に方法はない。
契約する前に次のように確認するのである。

「我が家は、どのような監理をしてもらえるか、どのような監理報告書をもらえるか」と。


そもそも木造住宅で、
監理は必要か?


構造計算で導いた基礎や躯体(建物の骨組み)ではなく、経験と勘で引き継がれてきた伝統工法――
そっくりそのまま、昔ながらの工法で建てるなら、監理は不要だと思う。

しかし、そのような建物は、日本の一般住宅には、もうない。
だいいち、確認申請が容易に下りないだろう。

現在の住宅の基礎は、石ではなく、コンクリートである。
そして鉄筋が入っている。もう昔のように、経験と勘で数値を導きだすことはできない。

鉄筋コンクリート構造計算基準をはじめ、いろいろな基準に則って設計し、施工しなければならないのである。

しかし、住宅の基礎を施工している業者の多くは、構造計算基準など知らない。
昔と同じように、先輩の仕事を見て、経験と勘を頼りに施工しようとする。

その証拠に、監理者が施工の誤りを指摘すると、平気で次のような返答が返ってくる。

「これまで、そんな指摘を受けたことはない。
どの住宅会社でも、このやり方でずっと通ってきた」と。

お分かりであろう。現在の住宅は、監理を手抜きすると、相当ヤバイのである。


新たな保険法人が
高いリスクを引き受ける


さて、監理の話から、再び「住宅瑕疵担保履行法」に切り替える。
その前に、前号の内容について少々補足を。

耐震偽装は、故意と悪意で引き起こされた事件である。
したがって、保険は適用されない。

そして、ヒューザーのようにマンション販売会社が倒産したら、瑕疵保証云々も空手形となり、購入者は泣き寝入りとなった。

それでは「住宅取得者を守る」ことはできない。
そこで、新たな法律で「住宅瑕疵担保責任保険法人」を定め、既存の保険では適用されない「瑕疵」を担うことにした。

では、新たな保険法人が瑕疵保証をすべて引き受けるのか?
厳密に言えば違う。

新たな保険法人は、住宅の瑕疵を履行するためにつくった法人ではあるが、この法人から更に民間の保険会社に「瑕疵保険」をかける。
つまり、民間の保険会社はすでに「瑕疵保険」という商品を持っているので、その商品で新たな保険法人をバックアップする、という構図だ。

ただし、どうしてもバックアップできないことがある。
それは、故意や悪意の瑕疵である。
民間の保険会社では「どうすることもできないリスク」を、新たな保険法人が引き受けるのだ。

保険の常識や理論を覆してまで成立した住宅瑕疵担保履行法。
その発端となった「耐震偽装事件」は、やはり強い衝撃を社会全体に与えた、ということだ。


すべての瑕疵が
保証されると思ったら
大間違い


「瑕疵」は、「かし」と読む。日常会話ではあまり使わない。
難しい言葉である。

「瑕疵」の意味は、「欠陥」に限りなく近い。
備わっているべき機能が備わっていない。
あるべき品質や性能が欠如している、という意味である。

さて、住宅の瑕疵には、どんなものがあるだろうか。
まず、耐震偽装マンションは?国が定めた構造計算基準に満たさない強度でつくられ、震度5〜6で倒壊の危険があるというのだから、紛れもない瑕疵である。

では、国交省の耐震性サンプル調査の対象となり587件のうち584件で違反が確認された(本誌第3号103ページ)建物は?

国が定めた「筋かい」や「壁量」が不足していたので瑕疵である。
次に、雨が漏ったら?あるべき性能が欠如しているから、瑕疵である。

では、雨ではなく、2階の水道管から水が漏ったら?あるべき性能を満たしてないから、瑕疵である。

クロスが剥がれるのも、床に傷があるのも、瑕疵である。
住宅に想定される瑕疵は、限りなくある。
しかし、2階の水道管から水が漏っても、クロスが剥がれても、床に傷が付いていても、瑕疵ではあるが、「住宅瑕疵担保履行法」の対象とはならない。

「住宅瑕疵担保履行法」の対象となるのは、次の2つに該当する瑕疵である。
@構造耐力上主要な部分
A雨水の侵入を防止する部分

「住宅瑕疵担保履行法」の成立で、住宅取得者はあらゆる瑕疵から救われ、もう泣くことはない、と思ったら大間違いである。
ただし、「住宅瑕疵担保履行法」の対象とならない瑕疵だからといって、施工会社や販売会社の責任がなくなるわけではない。


品確法で定めた義務を
住宅瑕疵担保履行法で
実効性を持たせる


前述の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」は、平成11年に成立した「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられた。

しかし、耐震偽装事件のように、施工者や売り主が倒産すると、業者の瑕疵担保責任は履行されず、住宅取得者は不安定な立場に立たされた。
そこで、業者の瑕疵担保責任を確実に履行させる資力を確保するために、平成19年に「住宅瑕疵担保履行法」をつくった。
 
2段構えの法律だから、ややこしいのである。
「品確法」で定めた瑕疵担保責任を、「瑕疵担保履行法」で実効性のあるものにした、という構図である。
「住宅瑕疵担保履行法」の対象となる業者は、分譲住宅と注文住宅で異なる。

対象となる業者とは、保険に加入するか、供託金を積まなければならない業者である。

たとえば耐震偽装マンション。分譲住宅である。
木村建設が工事を請け負って、ヒューザーが販売した。

この場合、対象となる業者はヒューザーである。
戸建ての分譲住宅も同じ考え方で、工事を請け負った業者ではなく、販売した業者が対象となる。

注文住宅はどうか?その場合は、工事を請け負った業者が対象となる。


監理を保険法人の
検査に委ねる時代が
来るのでは?


保険法人が行なう現場検査と、監理者が行なう監理は違う。
前者は保険のリスクを回避するためであり、後者は設計図書と工事内容を照合するためである。

目的は違うが、前者も後者もやることはよく似ている。
鉄筋、筋かい、金物、防水などを検査する。

前者の検査は、構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分に限定されるが、後者は建物のすべてに及ぶ。
前者も後者も法律で定められた、欠くことのできない業務である。

しかし、決定的に違うことがある。
前者の検査を受けなければ建物を引き渡すことはできないが、後者は、やらなくても現状では何のペナルティーもない。

したがって、現状、ほとんどの住宅で後者―――
すなわち監理は行なわれていない。

この状況で「住宅瑕疵担保履行法」が施行されると、果たして現実はどう動くか。
意外と、多くの住宅会社は歓迎するかもしれない。

というのは、監理を疎かにし、品質面で後ろめたい気持ちを抱いていた住宅会社にとっては、「渡りに船」だからである。
これまで手抜きしていた部分を補完してもらえるのである。

もちろん保険法人の検査は主要な部分に限定されるが、これまで何もしてこなかったことを考えると、それで十分ではないか。

多くの住宅会社の方針は、これで明確になるかもしれない。
監理の費用は徹底的に省け! 高い保険に加入したのだ。

検査(監理)は、保険法人に任せればいい。
もし、瑕疵が発生したとしても、保険法人の責任だ!

そしてわが社は、次のように宣伝するのだ。
「○○ホームは、○○保険法人の検査を受けているから安心!」と。

こうなる可能性を否定することはできないが、是非外れてほしい予想である。


長期優良住宅促進法も
品確法に連動する?


 もう1つ当たってほしくない予想がある。
「長期優良住宅促進法」いわゆる200年住宅に関することである。

質の高い住宅をつくり、長く住み続けることが豊かな暮らしの大前提であり、それが個人の資産の形成に結びつく、そこで政府も制度面や税制面でバックアップする、というのが200年住宅の骨子である。(本誌第4号99ページ)
耐震偽装事件に端を発した一連の法改正とはまったく関係のない法律、という位置付けでこれまで進めてきた。

ところが、「長期優良住宅促進法」と「品確法」は、非常に相性がいいのである。 

1つは、住宅の履歴である。
工事中や完成後の履歴は、監理記録が最優先されるべきと思うが、現状では心もとない。
監理記録に代わって、確実に実行される保険法人の検査が記載される、かもしれない。

もう1つは、長期住み続けることのできる家の基準。
地震や台風に対する強度、火災の感知や燃えにくさ、防湿・防腐など建物の劣化対策、配管などの補修や維持管理、省エネルギー効果……。

これらは基本的に、「品確法」で定めた性能表示である。
「品確法」の性能表示が適用される可能性は大いにある。

何の関連もない「長期優良住宅促進法」と「住宅瑕疵担保履行法」に見えたが、どこかで結びつく接点はある。

それが悪いというのではない。
耐震偽装に端を発した改革も、資産形成を推進する改革も、日本の建築行政という大きな枠の中でつくられた法律であるから、整合性を求めるほうが、むしろ自然だ。


喜んでリスクを
引き受けるなんて
さっぱりわからん


「住宅瑕疵担保履行法」は、新たなマーケットを生む。
供託金を積む業者がどれくらいあるか予測し難いが、現金を法務局に寝かせておくほどゆとりのあるところは、さほど多いとは思えない。

仮に100万戸の住宅が瑕疵担保履行法の保険に加入し、1戸当たりの保険料を10万円としたら、1100億円の新たなマーケットがまれる。すごい規模だ。

さらに「長期優良住宅促進法」に連動して、「品確法」の性能表示が義務化の流れになれば、新たなマーケットは更に広がる。

しかし私には、大きな疑問がある。
「住宅瑕疵担保履行法」は、民間の保険会社が持っている商品で瑕疵保証を行ない、保険会社が免責とするリスクの高い部分を、新たな保険法人が担うという構図だ。

つまり、魚に例えれば、美味しい身の部分を民間の保険会社が食べて、喉に引っかかる骨の部分を新たな保険法人が食べる。
これほど割に合わないことはないと思うのだが、積極的に国交省の認可を得て、喜んでリスクを引き受ける企業がある。

なぜか? その理由が、わしにはさっぱりわからん。
PDF イエヒトVOL.6講座4
関連HP イエヒト




『Index』から選択し、『Go!』をクリックして下さい。
オープンネット株式会社